4630万円誤送金事件 経験者が出金記録から分析する「田口容疑者のオンラインカジノ無間地獄」

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34連敗の謎

 翌11日には、5000ドル相当の金を2回動かした後、1万ドル相当の金を4回動かした。12日には決済方法を変えたため、300万円、400万円と端数のない大金を2回動かしている。

「出金ばかりで入金がなかったから、彼がずっと負けっぱなしだったと思われている節があります。入金ごとの単位で見ると彼が連敗していたのは事実ですが、1日の中で短期的に勝っていた瞬間もあったに違いありません。最初のうちは、いきなり入金した全額をバカラ(2分の1の確率にかける丁半博打のようなギャンブル。1回のゲームは1分もかからない)に突っ込むような賭け方はしていなかったと思います。1万ドルが1万5000ドル、2万ドルくらいになっていた瞬間もあったでしょう」

 しかし、負けが走っているギャンブラーは、「損切り」という合理的な判断はできないというのだ。

「取り返さねば……。頭の中にあるのは、その一点です。だから無茶な勝負に挑んでしまうのです。300万、400万と一気に入金額が増えたタイミングは、もはや狂気に囚われていたと思います。このくらいの段階までくれば、1ベット1万ドルくらいで倍々プッシュ(勝ち額をそのまま賭ける手法)の勝負を仕掛けていた可能性は多いにある。その過程で、もしかしたら、この1回の勝負に勝ちさえすれば救われる、という場面もあったかもしれない」

終わりのないギャンブル

 だが、ツキに見放されたのか、彼の出金はその後も延々と続いていくのである。結局、11日間で計34回もの出金が繰り返され、口座には6万8743円しか残らなかった。

 Aさんはオンラインカジノにはまっていた日々を、“無間地獄”という表現で振り返る。

「パチンコ屋には閉店があるでしょう。競馬も最終レースが終わったら帰るしかない。しかし、オンラインカジノには終わりがないのです。金が続く限り、24時間、延々と張り続けられる。会社への出勤途中や昼休みにも、スマホでひと勝負が可能なのです」

 負けが込んでいる最中は、まったく楽しい気持ちはないという。

「喉元が焼けるような感覚に襲われます。本当はすぐにでもやめたい。勝って、取り返して、元通りにして、二度と手が出せないようカジノサイトを封印したい。でも、負けが膨らむからやめ時が見つからない。破産へとひた走ってしまうのです」

 身の毛がよだつような狂気の世界である。果たして、田口容疑者は、本当にギャンブルですべてのカネを使い果たしてしまったのだろうか。それとも……。

デイリー新潮編集部

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