専門家が施設よりも「在宅死」を推す理由 自宅改造にかかる費用、排泄トラブル解決術は?

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入居させるための営業トークに要注意

 サ高住の施設長を務めた私の経験から、間違いなく言えることがあります。いわゆる老人ホームは、必ず入居者獲得マニュアルを持っているということです。そこには、相談や見学に来た人をできるだけ早く入居させる営業トーク術が書かれています。

「これも何かの縁です。今のようにまだお元気なうちに入居されれば、早くなじめて安心ですよ」

 といった具合に。そして、それを真に受けて入居し、抜け出せなくなってしまう……。この営業トークは、残念ながら入居者本人や家族のことではなく、施設側のビジネスの都合を考えたものであることを忘れてはいけません。ですから、在宅死を選択肢に入れているのであれば、軽いお試し感覚で“とりあえず”施設の説明を聞きに行くということだけは避けなければなりません。

コツは「100点満点を目指さない」

 こうして強い決意のもとで自宅での看取りを選択した場合、大切になってくるのは「100点満点を目指さないこと」です。ただでさえ、介護は子育てと違って貢献が報われない「撤退戦」です。そこで完璧を目指すと必ず心が折れてしまい、それこそ100%破綻します。肩にあまり力を入れ過ぎないことが肝腎なのです。介護者、被介護者がお互いに我慢していても、それで何とか成り立っているのであれば成功と言ってもいいかもしれません。

 つまり、いい意味で適当に、「全力」で介護に向き合わないことが重要なのです。したがって、介護離職や介護のための引っ越し、介護のための同居は絶対にやってはいけません。なぜなら、これらは介護のためにそれまでの生活をガラッと変えることを意味するからです。これでは介護に向き合い過ぎで、持続可能性を期待できません。介護は「できる範囲」ですればいいのです。より正確に言えば、できる範囲にとどめなければ続かないということです。

重要なケアマネ探し

 したがって、旅行をするために親や祖父母を一時的に施設に預けるなど、意識的に家族の介護休息日を設けるレスパイト(小休止)ケアという考え方も大事になってくるでしょう。あくまで目的は持続可能性であり、休むことは決して罪悪ではありません。

 そして何よりも、まずは良いケアマネージャーを探すことが重要です。ケアマネは、介護におけるトータルプロデューサーのような存在で、介護保険の使い方や人員配置などを指南してくれます。

 とりわけ、自宅での看取りを後押ししてくれるケアマネを選ぶことが重要です。良い在宅医が見当たらないなどと言って、遠回しに自宅での看取りを避けさせようとするケアマネもいますので、複数のケアマネと会い、相性の合う方を探してみるのがいいと思います。

 そうして「介護環境」を整えた上で、もうひとつ重要なのが「住環境」です。

 在宅死・自宅での看取りを選択したのであれば、自宅をそれに適したものにする必要があります。「若い頃仕様」の自宅で、心身の機能が衰えた高齢者がそのまま快適に過ごすのは至難の業です。つまり、自宅をできる限り、高齢者が過ごしやすく、介護もしやすい環境につくり替える必要があるわけです。

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