「ガッテン!」が消え「クロ現」は19時半開始…NHKの大番組改編は成功したのか?1か月を検証

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若者向け「夜ドラ」は厳しい

 4月4日のスタート前から不思議だったのが月曜から木曜までの午後10時45分から15分間、「夜ドラ」枠を新設したこと。

 民放のドラマとバラエティーが佳境に入る時間である。途中でチャンネルをNHKに替える人が多くいるとは思えない。

「夜ドラ」の第1作は青春ミステリー「卒業タイムリミット」だから、それまでNHKを観ていた人がそのまま視聴するとも考えにくい。午後10時台には「映像の世紀バタフライエフェクト」(月曜)や「歴史探偵」(水曜)などが並んでいるからだ。どう考えたって視聴者層が違う。

「卒業タイムリミット」の主演は井上祐貴(25)。面白い作品だ。ただし、明け方にお笑い番組をやるのと同じくらい条件が悪いから視聴率は大苦戦している。

 放送開始から4月末までの平均値は「世帯約3.1%」「個人約1.6%」「コア約0.5%」。特にコアが1%にも届かないのは痛い。若者向けの作品なのだから。

 NHKはこの改編から平日午後10時45分から同11時30分までの枠を「プライム帯・若年層ターゲットゾーン」と位置付けている。その狙いが最初から外れてしまった。

 より細かく個人視聴率を見てみると、NHKの思惑が視聴者ニーズと噛み合っていないことが分かる。以下、4月21日放送のデータである。

「卒業タイムリミット」のターゲットであるはずのT層(男女13~19歳)の個人視聴率は0.5%。やはりターゲットのM1層(男性20~34歳)は0.2%でF1層(女性20~34歳)は0.7%。他局に完敗だ。

 一方、ターゲットから外れているはずの男性50歳以上は2.2%。女性50歳以上は3.3%ある。「映像の世紀バタフライエフェクト」や「歴史探偵」から続けて観ている視聴者が多いのだろう。やはり、この放送枠で若者向けドラマはきつすぎる。

 午後11時台で始まった新番組は概ね順調。「阿佐ヶ谷アパートメント」(月曜)は大家(司会)役の阿佐ヶ谷姉妹が、アパートの住人(出演陣)役と温かく愉快なトークを繰り広げる。

 古くて新しい構成、内容であり、大化けしそうな番組だ。5月2日放送の視聴率は「世帯2.0%」、「個人1.0%」、「コア0.5%」だった。

 織田裕二(54)がMCの「ヒューマニエンスQ(クエスト)」(水曜)は若者でなくても面白いはず。人間というナゾだらけの存在を、じっくり深く追求する。例えば「誕生」や「死」、「進化」などに迫る。

 1年半前からBSプレミアムで放送されている番組の再編集版だが、焼き直し感はない。5月4日放送分の視聴率は「世帯2.1%」「個人1.1%」「コア0.6%」だった。

 狙い通りだったのはEテレの幼児番組「おかあさんといっしょ」の平日の再放送を、午後4時20分から同6時に移したことだろう。

 旧放送枠だった3月31日は「世帯0.4%」「個人0.2%」だったが、新放送枠となった5月2日は「世帯1.8%」「個人1.1%」と観る人が激増している。

 放送枠を移動したのはターゲットである保育園児の帰宅時間のピークに合わせたため。平日朝の本放送は午前7時45分から同8時09分で変わっていない。

 高視聴率番組が生まれた一方、まったく振るわない新番組もある。大改編の成否を一言で表すと、「ドロー」だろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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