3位転落の巨人 起爆剤に指名された中田翔の打撃フォームに必要なこと【柴田勲のセブンアイズ】

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中田翔の合流に期待

 降格前の中田はバットを立てる打撃フォームだった。力感を求めていた。パワーを前面に押し出した。開幕前、20キロの増量に成功したそうだが、これではバットの出がスムーズにいかない。ポイントまで遠回りする。

 さらにバックスイングが小さいから上体が突っ込む。2軍で140キロあたりを投げる投手には対応できても1軍投手の150前後の真っすぐや変化球には難しい。

 若い時は上半身5割、下半身5割の力で打てる。だが、年々年を取ってきたら上半身4割、下半身6割にする必要がある。

 右の股関節に体重を6割から7割乗せる。バットを寝かせてヘッドを捕手側へちょっと向ける。バックスイングしてステップする際は楽にできる。ボールを長く見ることができる。バッティングに力感は必要ない。順応性が肝心で求められるものだ。

 中田はいろいろ言われているが、私は打率2割7分前後、本塁打25本はいけると思っている。打点王を3回獲得したように勝負強さも持っている。吉川尚、坂本が離脱したいま、中田の復帰は打線に厚みが出る。中島宏之を代打の切り札に使えるし、守備の良さには定評がある。内野が締まる。期待がかかるのは当然だろう。私も期待している。

若手を起用する事情

 巨人の若手投手陣に陰りが見え始めた。4月までに堀田賢慎、戸田懐生、赤星優志、平内龍太、山崎伊織、大勢がプロ初勝利を挙げたものの右ヒジのトミー・ジョン手術明けの山崎伊は登録と抹消を繰り返しており、赤星は登録を抹消された。堀田もヤクルトの村上宗隆に満塁弾を浴びてKOされるなど精彩がない。戸田、直江大輔は2軍で調整中である。

 彼ら若手は開幕前のチーム事情があって使ったもので、それがうまくいってラッキーだった。それがいつの間にか期待が大きくなってしまった。

 本来は菅野であり、戸郷翔征、高橋優貴、C.C.メルセデス、マット・シューメーカーらが前面に出なければならない。しかし若手が主力になった。

 そのへんが今季の巨人の辛いところだ。野手陣も同じである。中山礼都、湯浅大、増田陸らを起用しているが、原監督にすればあと2、3年後にモノになってくれればという選手だろう。いま使うところに投手陣同様苦しい台所事情が見える。

 いずれにせよ巨人は緊急事態である。前回今コラムで「長いシーズンには好不調の波がある。小波で終わるか、それとも大波か」と記した。どうやら今回は後者だったようだ。

 ここは全員で乗り切るしかない。まずは10日のDeNA戦、中田に注目だ。

 ※1 21年8月20日、日本ハムから無償トレードで移籍。今季は23試合に出場して打率.188、2本塁打、8打点。

 ※2 9試合に出場して打率.241、4本塁打、8打点。雨天コールドでノーゲームとなった4月29日の試合では2打席連続本塁打を放っている。
 (成績は9日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮編集部

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