松重豊がせりふ暗記に使っているノートとペンは? 撮影中も衣装の中に

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完璧に覚えなければ「灰皿が飛んでくる」

 大人気ドラマ「孤独のグルメ」のほか、連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」への出演も好評だった俳優・松重豊さん。2020年には『空洞のなかみ』で作家デビューした彼が語る、役者人生における“代わりのきかない唯一無二の相棒”とは?

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 相棒という呼び方がふさわしいかはともかく、このノートが無ければ私の仕事は立ちゆかない。コクヨ製A5サイズ7ミリ幅の横罫40枚つづりという、大手文具店に行けば大抵置いてあるフィラーノートという名の普通のノートだ。1枚1枚ミシン目で切り離す事ができて、おまけにファイル用の2穴まで開いている。さらに左3目盛りに縦一線引いてあって、このあたりが代わりのきかない唯一無二の私の相棒たるゆえんなのだ。

 小学校時代から書いて覚えることを習慣づけてきた。先生の黒板の文字を書き写す板書の頃から、試験前に友人のノートを借りて写させてもらう中高を経て、大学受験もわら半紙や広告の裏にひたすら語彙(ごい)を書き殴って無理矢理頭に詰め込んだ。社会人になれば書いて覚えるほどのこともないと思ったが、残念なことに職業に俳優を選んでしまった。舞台俳優の道に進んだ私が選んだ師匠は蜷川幸雄氏。稽古では、本読みというプロセスを飛ばしてすぐさま立ち稽古に入る人だった。しかもいつ別の役を指名されてもいいように男性役は全部覚えておかなければならなかった。学生時代はうろ覚えでも答案用紙に書けばいいだけのこと。こちらは完璧に覚えて立て板に水でまくしたてなければ灰皿が飛んでくる。書いて書いて覚えた。

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