“令和の石立鉄男”という声も… 33歳「濱田岳」、最大の強みとは何?

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これからが正念場…

 一方で独自の俳優論を持っているのは間違いない。好感度の高い濱田ならバラエティの司会やレギュラーでも成功しそうだが、ドラマの番宣以外はバラエティに出ない。素の自分をさらけ出すことが俳優の仕事にプラスにならないと考えているからだろう。この流儀も先輩たちから学んだのではないか。幼いころに共演した長塚京三さん(76)たちもバラエティには出ない。

 2011年に結婚したスーパーモデルの小泉深雪(43)との夫婦生活を自ら明かすこともほとんどない。小泉はCHANEL、GUCCI、GIVENCHYなどのショーに出演したほか、フランスの「madame FIGARO japon」など国内外のファッション誌に次々と登場。まさにスーパーな存在だ。

 小泉の身長は179センチ。一方、濱田は160センチ。年齢も小泉が9歳年上。世間が拘りそうな格差を気にしなかったところも濱田らしさを感じさせる。2012年1月、2人の間には女児が誕生した。

 デビューから24年。濱田はこれまでに醜聞が報じられたり、ささやかれたりしたことが一度もない。家庭第一。それも仕事にプラスに働いているのだろう。

 欲の見られない濱田だが、これからが正念場ではないか。過去に連ドラ8本、映画7本に主演したものの、プライム帯(午後7時~同11時)での主演連ドラは「釣りバカ日誌」のSeason1とSeason2のみ。濱田の実力と人気なら、もっと飛躍できるはずだ。

 ドラマの放送枠が増えていることもあって、視聴者は作品の多様化を望んでいる。二枚目が主演するミステリーや刑事ドラマ、ラブコメばかりでなく、二枚目半による泣き笑いの人間ドラマもあったほうがいい。そんなドラマの主演を張れる数少ない俳優が濱田に違いない。

 1970年代は視聴者が石立鉄男さんのドラマを食い入るように観ていた。石立さんは日本テレビの水曜午後8時台の連ドラ7本に相次いで主演。演じるのは二枚目半ばかり。いずれも泣き笑いの人間ドラマだった。

 死んだ姉の愛娘を懸命に育てる独身男を描いた「パパと呼ばないで」(1972年)、血のつながらない母と妹を幸せにするために家業の水道屋を継ぐ元バンドマンが主人公の「水もれ甲介」などである。いずれも後世に語り継がれている名作だ。

 石立ドラマは家族そろって楽しめた。CS放送のチャンネルNECOで今も繰り返しアンコール放送されているが、古ぼけていない。犯罪や恋愛のカタチは時代によって変わるが、人情は不変だからだろう。

 石立さんは1960年代後半、文学座の花形二枚目俳優だった。だが、自ら進んで二枚目半に。人情喜劇の奥深さに惹かれたからだ。

「令和の石立さん」に最も近い存在は誰かというと、濱田だろう。石立さんと同じく、ユーモアとペーソスを併せ持つ存在だからだ。キャリアも実力も申し分ない。

 再び二枚目半の時代が来るか。

(1)Grazia2012年7月号
(2)an・an2016年6月8日号

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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