ウクライナ戦争でコメ不足の危機 アジアで政情不安が起きるのも時間の問題か

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 ロシアのウクライナ侵攻の影響で世界の食料価格は過去最高のペースで上昇している。

 国連食糧農業機関(FAO)が算出する今年3月の世界食料価格指数は前月比13%上昇し、侵攻前から高騰していた食料価格は過去最高値に押し上げられた。

 最も大きな影響が出ているのは小麦市場だ。これにはロシアとウクライナ両国の小麦の輸出量が世界全体の3分の1近くを占めていることが背景にある。戦闘でウクライナの小麦畑が荒廃し、作付けが遅れるとともに、西側諸国の経済制裁でロシア産の小麦輸出にも悪影響が生じているからだ。

 ロシアとウクライナの小麦の主要輸出先である中東や北アフリカ諸国では、小麦を始めとする主要食料品の価格が急騰しており、国連世界食糧計画(WFP)は「人々の我慢が限界に達しつつある」と懸念している。

 トウモロコシの国際価格も最高値に迫っている。世界有数のトウモロコシ輸出国のウクライナからの供給不安に加え、価格が高騰するガソリンの代替としてトウモロコシ由来のエタノールの需要が米国などで急増し、需給が逼迫している。

 ウクライナがひまわり油の主要生産国であることから、食用油の価格も急上昇している。

 このように、ウクライナ危機は世界の食糧生産に既に大きな影響をもたらしているが、懸念材料はこれだけにとどまらない。

肥料価格も値上がり

 食糧生産に欠かせない肥料の価格も深刻な価格上昇に見舞われている。

 世界銀行が算出する今年3月の肥料価格の指数は前年に比べて2.3倍に急騰した。2008年以来、14年ぶりの高値となっている。

 ウクライナ侵攻で制裁を受けた主要な肥料生産国であるロシアやベラルーシからの供給が停滞していることが深く関係している。

 主要品種の塩化カリは前年に比べて2.8倍となり、主要肥料の中で最も高い上昇率を示している。肥料の三要素の一つであるカリは、ロシアとベラルーシの生産が3割以上を占めており、両国から西側諸国への輸出が激減している。日本もロシア産の塩化カリの輸入を既に停止した。

 肥料原料となるアンモニアもロシア産が世界の輸出の約1割を占めるが、侵攻後はウクライナの港からの輸出が停止し、品薄感が強まっている。

 両国産に代わる肥料の代替調達の取り組みが始まっているが、限界があり、世界の肥料市場での需給逼迫が解消する兆しは見えてこない。

 肥料価格の上昇は穀物の供給減少に直結することは言うまでもない。

 米農務省によれば、肥料を相対的に多く使うトウモロコシの今年春の作付面積は4%減少する見通しだ。

 国際肥料開発センター(IFDC)は「サハラ砂漠以南のアフリカでの肥料使用量は既に3割減少し、その影響で1億人分の食料に相当する3000万トンの生産が落ち込んだ」との見方を明らかにしている。

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