東京23区は平均8449万円――業界のプロが明かす、新築マンションはまだまだ上がる根拠

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今夏以降はさらなる高騰も

 加えて、住宅は「躯体」すなわち「器」だけで完成するわけではなく、そこに様々な設備が集まって初めて販売可能となる。問題は、台所やお風呂、トイレといった各々の設備(住設)も危機的な状況に見舞われていることにある。

 鋼板や樹脂の仕入れ価格が上昇したことで、システムキッチンやユニットバスなどの価格は軒並み上昇。また、コロナ禍で東南アジアの工場が操業停止に追い込まれた影響で半導体の生産が滞り、温水洗浄便座や給湯器も品薄と値上げが続く。原油高でこれまで以上に輸送コストがかさむことを加味すれば、今後も価格上昇は避けられない状況だ。

 端的に言えば、「住宅」にはコロナ禍や資源高、円安などがもたらす経済的なマイナス要因のすべてが圧し掛かっているわけである。今夏以降は、長期化するウクライナ危機の影響も本格的に顕在化するようになる。このまま資材費がアップし続ければ、マンション価格がさらなる高騰を見せることは言うまでもない。

 無論、こうした状況はマンションだけでなく戸建て住宅にも悪影響を及ぼす。世界有数の森林大国・ロシアからの木材輸入が困難になることで、第二次「ウッドショック」に発展することも懸念され、そうなれば戸建て住宅の価格も高騰しかねない。

「念願のマイホーム」は夢物語に――

 それでも、国内外の富裕層は首都圏のマンションを購入し続けるだろう。世界を見渡せば、日本の高級マンションはまだ「安い」と考えているからだ。また、郊外よりも都心のマンションの方がリセールバリュー(再販価格)は圧倒的に高い。そのことも人気の高止まり状態を支えている。

 現在のマンション事情に寂しさと虚しさを感じているのは、著者を含む不動産業界の人間も同じだ。私たちは、一般家庭の「一生に一度の買い物」に関わることに矜持を抱いてきた。しかし、新築マンションの平均価格が6000万円を大きく上回る状況では、一般家庭向けのマンションを建てること自体が困難だ。サラリーマン家庭にとって「念願のマイホーム」は、もはや夢物語となりつつある。

山中琢人(やまなか・たくと)
2002年に早稲田大学卒業後、マンションデベロッパーとゼネコンの双方に勤務。12年より京都在住。

デイリー新潮編集部

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