キムタク主演ドラマのベストヒロインは誰だ? メディア文化評論家が厳選した“3人の女優”

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『Beautiful Life~ふたりでいた日々~』町田杏子(常盤貴子)

 2人目は、常盤貴子が『Beautiful Life~ふたりでいた日々~』(TBS系、2000年)で演じた町田杏子である。脚本は『ロンバケ』と同じ北川悦吏子だ。

 木村は美容師の沖島柊二。常盤は足の不自由な図書館職員、町田杏子。このドラマの特色は、ハンディキャップを背負ったヒロインの設定にあった。

 現在はハンディキャップもその人の「個性」であり、特別視するものではなくなっている。だが、まだこの時代はそうではない。ましてやドラマの登場人物ともなれば、「身体が不自由=かわいそうな人」と受け取る視聴者も多かった。

 ところがヒロインの杏子は、「かわいそう」と思われることが一番嫌いだ。17歳の時に病気で足が動かなくなったが、クルマは自分で運転するし、人前では明るい。「障害者」というくくりで自分を判断されたくないからだ。

 とりわけ他人からの同情には敏感で、強い抵抗を見せる。たとえ恋愛の相手がキムタクであっても、一筋縄ではいかないヒロインなのだ。

 第1回に忘れられないシーンがある。柊二に髪を切ってもらった杏子が、雑誌の取材に応じる。写真撮影の後、2人は並んで歩道橋から夕陽を眺めた。この時、ふいに柊二が体をかがめる。不思議がる杏子に、柊二が言う。

「いや、車椅子だとさ、いつも目の高さ100センチぐらいでしょ。そうするとやっぱり見えてくる世界違うんだろうな」

 柊二はごく自然に、杏子と同じ視点に立とうとしたのだ。普段、上辺だけの優しさに接することの多い杏子は、彼の振る舞いと言葉に気持ちを揺さぶられる。それは、いくつものハードルがある恋の始まりでもあった。

 杏子のハンディキャップはもちろん、物語が進む中で、かつての恋人の出現や家族からの反対、さらに不治の病といった試練が続く。

 死への不安や恐怖を抱えながら、それを柊二や自分の家族に悟られないよう、必死で自制する杏子。その健気さが切なさを倍加させた。

 憑依したかのように杏子になり切っていた常盤。その感情表現は極めて繊細で、最後まで目が離せなかった。遥か遠くへと旅立ったヒロインは、残された柊二だけでなく、見る側の心にも長く刻まれることになる。

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