キムタク主演ドラマのベストヒロインは誰だ? メディア文化評論家が厳選した“3人の女優”

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

『ロングバケーション』葉山南(山口智子)

 キムタクドラマで鮮烈な印象を残したヒロイン。1人目は、『ロンバケ』こと『ロングバケーション』(フジテレビ系、1996年)で山口智子が演じた葉山南だ。

 初回の冒頭、視聴者は街の中を走る南に驚かされた。白無垢に文金高島田の花嫁姿だったからだ。

 結婚式当日に婚約者の朝倉が失踪し、困った南が向かったのは彼が住む部屋だった。しかし、そこにいたのはルームメイトのピアニスト、瀬名秀俊(木村拓哉)だけ。後日、南はこの部屋に荷物を運び込んで同居してしまう。

 モデルの仕事で行き詰っている南は、性格的にも欠点だらけだ。思い込みが激しく、強引で、態度が大きい。尊大かと思えば、卑下したり。「こうあって欲しい」と思い描く自分と現実のギャップに揺れている。

 一方の瀬名も、ピアノの才能はありながら他者との関係がうまく築けず、無名のままだった。

「僕は誰かのためにピアノを弾いたことがない。ピアノが好きだけれど、誰かに聞かせたいと思ったことがないです」などと言って、ピアノ教室で講師をしている。

 そんな冴えない2人だが、ある時を境に変化が起きる。南は朝倉のことを引きずり、仕事も中途半端なままだ。彼を目撃したというパチンコ店に入り浸る南に、瀬名が言う。

「何をやってもダメな時ってあるじゃん。うまくいかない時、そんな時はさ、神様のくれた休暇だと思って、無理して走らない、頑張らない、自然に身を任せる」(第2回)

 脚本の北川悦吏子が生んだ名セリフだ。タイトルの意味が明かされたと同時に、2人の気持ちが動いた瞬間でもある。

 とはいえ、ここから様々な紆余曲折があり、恋は簡単に成就しない。しかし、見る側の南に対するイメージは変化していった。当初、南の欠点と思われた性格が光を放ち始めたのだ。

 配慮が足りないと思われる乱暴な言葉の奥に隠された、はにかみと優しさ。遠慮のない強引な行動の裏にある、相手のことを思う一途さ。やがて瀬名も、一番大切な人は誰なのかを知っていく。

 山口が心のバランスを保てない自分もさらけ出す、天衣無縫なヒロインを好演したことで、南はキムタクドラマの「ミューズ(女神)」の一人となった。

次ページ:『Beautiful Life~ふたりでいた日々~』町田杏子(常盤貴子)

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。