「ロシアを最も強く非難すべきは日本である」 石破茂元防衛大臣が見るウクライナ侵攻

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国連緊急特別総会を

 国際社会として、いま直ちになすべきことは「一刻も早く戦闘を停めさせ、これ以上の犠牲を出さないこと」に尽きます。情報や武器を提供し、相手を非難して憎悪をあおり、厳しい経済制裁を科しても、それで戦闘行為が終わるわけではなく、犠牲は日々増えるばかりですし、窮地に陥ったプーチン大統領が大量破壊兵器の使用を決断すれば、本当に第3次世界大戦となりかねません。

 国連総会の場は、まさしくこのために使われるべきであり、「安保理が機能しない」ことすなわち「国連は無力だ」というのは早計だと思います。

 ウクライナの、文字通り存立を懸けた祖国防衛の戦いに心を寄せ、各国ができるだけの支援を行うことも大切です
。しかし国際社会全体として、まずはこれ以上の犠牲者を出さないために何ができるかを真剣に考え、努力すべきです。停戦は事実行為であり、戦争の結果とは無関係です。当事国双方の合意条件や、戦争犯罪の取扱いは、むしろ戦闘行為が中断されてから時間をかけて議論されるべきものです。日本もそのために何ができるのか、渾身の努力をしなければなりません。

 今のところあまり取り上げられていませんが、スエズ動乱(第2次中東戦争)の際に国連が果たした役割は良い先例となりうるのではないか、と私は考えています。

 1956年、エジプトのナセル大統領がスエズ運河の国有化を宣言して、英仏と深刻な対立をしました。背景にはナセル大統領のアルジェリアへの影響力、第1次中東戦争からのイスラエルとの対立などがあり、イスラエルと英仏は密かに協議をし、イスラエルによるエジプトの軍事侵攻に続き、制裁名目で英仏も戦闘を開始します。

 常任理事国である英仏が当事者であるため、この時も国連安保理は機能しませんでした。しかし、国連緊急特別総会が開催され、停戦と英仏イスラエル軍の即時撤退、および停戦監視のための国連緊急軍の編成が決議されました。この国連緊急軍がPKOの原型となりました。

 ここに何らかのヒントがあるのではないでしょうか。

 たとえば、このスエズ動乱の例に触れ、こうしたプランを実行しよう、といった働きかけをすることは日本でもできるはずです。岸田総理が国連や関係国に呼び掛けてみてもいいのではないかと思います。

 ただ、これを日本が主導して進めた場合、本当に停戦合意が達成され、そこに監視団を派遣するとなった時に、大きな危険を伴う任務に自衛隊を派遣するということを真剣に検討しなければなりません。国連には停戦監視の知見の蓄積がありますが、自衛隊にとってはイラク派遣以来の大変な任務となるでしょうし、そもそも自衛隊が派遣されることに対しても大きな国内議論があるでしょう。

 このような想定も含めて、今回のロシアの侵攻は、日本が先送りにしてきた安全保障の諸問題に道筋をつける機会とすべきだと強く感じます。それは核兵器についても同様で、非核三原則の見直しも正面から議論すべきものです。

デイリー新潮編集部

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