プロ野球の時代に逆行したコロナ対策 日本人は想定以上にバカなのか(中川淳一郎)

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 日本野球機構(NPB)って未だに2020年春を生きているんですかね……。開幕以来楽天、DeNA、オリックスの選手・スタッフに新型コロナウイルス陽性者が続出した結果、試合が軒並み中止に。

 このままいくと、全チームから陽性者が続出し、興行が成立しなくなるから「検査禁止! 体調悪い選手はとにかく休め!」とでも指示を出すのかと思ったら……まさかの開幕時の基準「月1回の検査」を4月8日には「2週間に1回」に変え、さらには11日に「1週間に1回」に変更するではありませんか!

「とにかく大量に検査をしなくてはならない!」と2020年春に玉川徹氏と岡田晴恵氏がテレビで絶叫しまくっていましたが、あれから2年、NPBは玉川氏と岡田氏でさえ今では主張しなくなった古臭い理論に戻ってしまった。他のイベント関係者がマネしたらどうするんだよ、おい!

 春のセンバツ高校野球でも陽性者が出たチームは辞退をしたし、高校ラグビーに至っては東福岡高校が出場するはずだった決勝戦が、5日前に対戦したチームから陽性者が発見されて中止に。後に決勝の相手だった報徳との練習試合が組まれたのは不幸中の幸いでした。

 完全に世界と逆行している状況ですが、もしかして、日本って想定よりも大幅に馬鹿な国なのではないかと最近しきりと思うようになりました。日本よりも圧倒的にコロナ被害が多かったウクライナ(人口約4400万人、累計陽性者500万人、累計死者11万2千人)の人々はマスクどころではないわけですが、ボリス・ジョンソン英首相はかの地を訪れ、視察したのです(ちなみに日本は人口1.26億人、陽性者数718万人、死者2万9千人)。ひょっとして日本はコロナの方が戦争よりもヤバいと思っているのでは……。

 今でも学校給食は「黙食」強制中。黙って前向いてメシ食い、マスクを外して15分経つと濃厚接触者認定されるから14分でメシを食え!ってヤツですね。それにしても日本の無能な働き者は余計なキャッチフレーズを作るのだけは上手だな。最近、感染症対策馬鹿ポスターを振り返っていたのですが「黙〇〇」関連だけでも以下がありました。

「黙浴(銭湯他)」「黙蒸(サウナ)」「黙飲」「黙煙(喫煙所)」「黙歯磨き(職場)」「黙化粧直し(職場)」「黙乗(バス)」「黙筋トレ(ジム)」

「黙カラ」は「心の中で歌うだけ」かと思ったらさすがにそうではなく、「歓声」ではなく「手拍子」「拍手」をし、歌う人はマスクを着けるそうです。

 コロナって無能にとっては「仕事しているつもり」になれる最高の機会だったんじゃないですかね? 何しろ「マスク・手洗い・3密対策を!」と訴え、ポスター作って「大切な誰かを守る行動を」とか「思いやりワクチン」とか言っておけば、とりあえず仕事の成果物は出せるわけですよ。

 普段は目立たない部署の人々(含むTVに出る感染症の専門家)にとって千載一遇の目立つチャンス! こりゃ終わらせたくないですね。

 しかし、今年激弱の阪神ファンにとっては、もはやコロナ陽性者登場による試合中止しか希望がないというのが悲しい限りです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2022年4月28日号掲載

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