司令官を“逮捕”、国防相は不自然な心臓発作… プーチン「大粛清」の意図とは

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プーチンのストレスの源

 攻囲を開始してから1カ月以上経ちながら、いまだ落ちない南東部の要衝マリウポリの存在もまた、プーチンのストレスの源である。

 元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明・大和大学教授が言うには、

「ロシア軍にとって、マリウポリを落とせば黒海沿いに鉄道を通して陸路でクリミア半島に物資を運ぶことができるようになる。だからこそ何としても陥落させたい都市なのですが……」

 ロシア軍は「降伏」を呼び掛けるも、ウクライナ側は最後の一兵になろうと抵抗を続ける姿勢を崩さない。

「激戦でマリウポリにロシア軍の戦力の一部が釘付けにされており、結果的にそれ以外のエリアに支配地域を拡大させることができなくなっています」(同)

 前出の中村氏によると、

「19世紀以降、ロシアは冬季でも氷に覆われない“不凍港”を入手せんがために南下政策を繰り返してきました。プーチンは5月9日の『独ソ戦勝記念日』までに、マリウポリを含む(黒海北部内海の)アゾフ海からオデーサまでの領域を獲って“勝利宣言”をしたかったはずです」

民族浄化も正当化

 しかし、ロシアにとって侵攻の出口は今なお見えず、ロシア国内では、喧伝される「戦争の大義」に変化が見えつつあるという。

「ソ連時代の国営通信社の流れをくむ『RIAノーボスチ』は4月3日の記事で“ウクライナの政治的なエリートは抹殺されなければならない”“非ナチス化は必然的に非ウクライナ化となる”などと記し、民族浄化を正当化し始めているのです」(先の外信部デスク)

 この“非ウクライナ化”の論理は、ウクライナ市民に対する「強制移住」措置とも通底しているようだ。

 英国の「インディペンデント」紙(4月12日付)は、クレムリンから入手したという「極秘文書」の中身を以下のように伝える。

〈クレムリンが先月、ロシア連邦、ウクライナ、ドネツク、ルハンシクの9万5739名の人々を戦闘地帯の故郷から5500マイルも離れた場所に再定住させるよう緊急命令を発した。命令には1万1398人の人々をシベリア、7218人の人々を極東、7023人の人々をコーカサスに送る条項が含まれている〉

 これについて『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)の著者で現代史家の大木毅氏が語る。

「ナチからの解放を目指すというだけでなく“非ウクライナ化”“ロシア化”を本格的に進める意図があるように思います。ウクライナ人を追い出し、強制連行し、一部は殺害し、空いた土地をただ同然でロシアの貧困層に分け与えて入植させる。そうすればロシア国内での支持が高まるという目論見です」

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