仏大統領選 マクロン楽勝が一転…極右「ルペン」急上昇と伝統的大政党“惨敗”の背景

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 現職のエマニュエル・マクロン大統領(共和国前進)楽勝と見られたフランスの大統領選挙で、親ロシアでNATO脱退を唱える極右のマリーヌ・ルペン候補(国民連合)が健闘し、予断を許さない。【八幡和郎/評論家】

 4月24日の決選投票でルペン勝利の可能性はマスコミあげて反ルペン報道を強化してることもあり一割程度ではあるが、同じ二人による五年前の決選投票では、ダブルスコアだったから、世論調査での差が数パーセント、調査によっては誤差の範囲内というのは大衝撃だ。

 ルペン候補が勝ってNATOを脱退したら、プーチン大統領の苦境など吹っ飛んでしまうし、西欧でアウトローとして扱われてきた極右が政治的市民権を得ることにもなる。

 12人の候補者で争われた大統領選挙第1回投票(4月10日)で、保守・革新いずれもの伝統的大政党が惨敗したのも衝撃的だった。

 フランスでは、対独戦の英雄ドゴールが1958年に第五共和制を建ててから、極左諸政党、共産党、社会党、中道諸政党(現在では環境派も)、ドゴール派(現党名は共和党)、極右諸政党という政治地図で、大統領選挙や総選挙では、第1回投票では候補者が乱立するが決選投票では、社会党候補と、ドゴール派候補の一騎打ちが多かった。

 大統領は、ドゴール、ポンピドー(ドゴール派)、ジスカールデスタン(中道派)、ミッテラン(社会党)、シラク、サルコジ(ドゴール派)、オランド(社会党)と来たが、前回は社会党を離党したマクロンが中道派を糾合した。

 社会党は分断され、ルペンが資金疑惑で沈んだフィヨン(共和党)とメランション(不服従のフランス、社会党離党組と共産党が支持)を僅差でかわして決選投票に進んだが、マクロンに敗れた。マクロンは直後の総選挙で新党を結成して大勝した。

 マクロンは、経済政策では「維新」にやや似た行政改革と市場原理尊重で経済成長率を上げる路線だが、集めた税金の使い途では左派や環境派の主張に配慮している。マクロン自身はENA(国立行政学院)卒のエリート官僚で、ロスチャイルド系銀行の幹部だったこともある。だからGAFA(Googleなど巨大IT企業群)には厳しいが、米国系金融資本とは関係が良すぎるし、マッキンゼーなどに巨額の公費が流れ、自分の政治運動に流用されている疑惑もある。

 マクロン政権一期目の改革は自動車への負担増に端を発した「黄色いベスト運動」も大過なく乗り切り、失業は減り経済成長率も上がった。コロナ危機もワクチン事実上強制という賭けが成功して行動規制を避けつつ医療崩壊を回避して高く評価された。外交はドイツや日本との良い関係、トランプやプーチンとは対立しつつも対話維持、中国や英国には毅然と対処して得点を挙げ、ウクライナ紛争直前には再選が確実視されていた。

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