1995個で1位の「清原超え」も秒読みに…球史に残る“三振王”を振り返る!

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「バットを振らなければ、野球は始まらない」

 西武・中村剛也が今シーズン、プロ野球の通算三振記録を更新する可能性が高くなっている。中村の通算記録は4月17日時点で1932三振。トップの清原和博(西武など)との差は「23」に迫っている。三振が飛び抜けて多いのは、当人にとって、あまり名誉に思えないかもしれないが、歴代トップの通算400勝を記録した金田正一(国鉄など)が「(自身が達成した歴代1位の)298敗も誇れる記録。投手がそんなに負けたら、普通ならクビになっとる」と述懐していたように、「負の記録」もまた、それだけ長い間、プロの第一線で活躍しつづけた“男の勲章”であることに変わりはない。【久保田龍雄/ライター】

 昭和の三振数歴代トップは、衣笠祥雄(広島)の「1587」(現在は歴代10位)である。23年間にわたる現役生活で、シーズン100三振以上は1度もなかったが、1970年にリーグトップの81三振を記録するなど、80三振以上が10回とコンスタントに記録を積み上げ、豪快なフルスイングで空振り三振する姿も、お約束のイメージとなった。

 これも「バットを振らなければ、野球は始まらない。より強い打球をより遠くへ飛ばす」という信念に基づくもので、衣笠の空振りは、一種独特の爽快感すらあった。

3球連続フルスイング

 1587個の三振の中で、今でも“伝説”として語り継がれているのが、1979年8月2日の巨人戦での“3球連続フルスイング”の空振り三振だ。

 前日の巨人戦の7回、衣笠は西本聖から左肩に死球を受け、肩甲骨を亀裂骨折。全治2週間と診断され、足掛け10年にわたって続けてきた連続試合出場記録も「1122」でストップするかに思われた。ところが翌2日、衣笠は「打てると思ったから」と古葉竹識監督に出場を直訴すると、7回に代打で登場する。

 打席に立っているだけで連続出場記録は成立するのに、衣笠は肩の痛みをこらえながら、江川卓の外角直球に3球続けてフルスイングで挑み、空振り三振に倒れた。このとき、衣笠は「1球目はファンのために。2球目は自分のために。3球目は西本君のために」と念じながらバットを振ったという。

 ケガを押して出場し、全力でプレーする主砲の姿に勇気づけられた広島ナインは、これまで下位に低迷していたのが噓のように大逆襲に転じる。8月中旬には首位に立ち、10月6日、4年ぶりの2度目のリーグ制覇を実現した。ひとつの三振が、チームの優勝と球団史上初の日本一、さらには前人未到の2131試合連続出場(最終的に2215試合)という金字塔につながった。

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