全日本選抜柔道体重別選手権 阿部一二三がライバル・丸山城志郎との決勝で見せた自信

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 全日本選抜柔道体重別選手権(福岡国際センター)の2日目(4月3日)に、男子の試合が行われた。この大会、GS(ゴールデンスコア。ポイントが入れば勝敗が決まる延長戦)で一方が指導を取られて反則負けしてしまう、観客には物足りない試合も多かったが、今は亡き「平成の三四郎」古賀稔彦さんの息子の古賀玄暉が五輪王者の高藤直寿を破るなど見どころがあった。(粟野仁雄/ジャーナリスト)

五輪チャンピオンの証明

 もっとも注目されたのは、阿部一二三(24、パーク24)と、東京五輪代表を決める決戦で敗れて涙を飲んだ丸山城志郎(28、ミキハウス)の対決。阿部は東京五輪チャンピオン、丸山は世界選手権で連覇中だ。両者、順当に勝ち上がり決勝で相まみえた。一昨年12月に行われた24分間に及んだ「ワンマッチ」の代表争いを思い出させる息詰まる攻防は、延長に入って2分、阿部が一挙に猛攻勢に出る。強引に引っ張り回された丸山は思わず阿部の膝元へ潜りこむように畳に両膝をついてしまった。

 その瞬間、阿部は「これは指導でしょ」と言わんばかりの表情で主審を見た。主審が2人を定位置に戻して、丸山に3つ目の「指導」を宣告し、阿部が勝った。その瞬間、阿部は「シャー」(に聞こえた)と大きな声を上げた。

 2014年、高校生で登場した阿部が初出場の講道館杯で、当時、世界選手権を3連覇していた大御所の海老沼匡(まさし、引退)を攻めまくって勝ったことを思い出させる動き。現在は憧れの五輪王者になり、体中に自信がみなぎる様子だった。五輪の後、1か月ほどはテレビ出演などを楽しんだが、すぐに猛練習に戻っていた。

世界選手権代表に選出

 阿部は「五輪が終わって、自分はさらに進化できる、もっと強くなれると思った。気持ちを作るのは苦労しなかった」「五輪チャンピオンだと証明できた」「金メダルを取ったことで自分の柔道に自信がついた。その分、強い気持ちで前に出ることができた」「(今後は)全部勝ってパリ五輪に行って連覇したい」など、その声は弾む。逞しい兄の姿を、前日の女子52キロ級を途中棄権した妹の詩が見守っていた。

 リベンジ成らなかった丸山だが、男女ともに2階級で2人枠を取れることから、阿部とともに10月にタシケント(ウズベキスタン)で開かれる10月の世界選手権代表に選ばれた。丸山は「内容は悪くなかった。今後につながる試合ができた。世界で勝たないと意味がない」などと話した。

 振り返ればこの日、スタートで勢いの差がついた。丸山が初戦を延長に持ち込み、相手の指導反則で勝ったのに対し、阿部の初戦は見事な一本背負いで一本勝ち。久々に入った観客の大拍手でいきなり盛り上がった。不用意に前に出ると丸山の巴投げや、横捨て身などを食らうがこの日は恐れなかった。とはいえ、ただ勢いを見せただけではなく工夫も垣間見えた。内またも切れる丸山の多彩な技を封じるために、阿部は担ぐばかりでなく、足技を繰り出すことも多かった。

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