引分けのベトナム戦 柴崎岳のような選手を使うのは難しい時代になりつつある

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 なんとも評価のしようがない前半の森保ジャパンだった。もしもベトナム・サポーターのように声を出すことが許されるのなら、前半終了の笛と同時に埼玉スタジアムはブーイングに包まれたことだろう。それほど酷い前半の出来だった。

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 原因はいくつもある。W杯出場を決めたアウェーのオーストラリア戦から森保一監督は、CB吉田麻也と右SB山根視来以外の9人を入れ替えた。

 森保監督自身、前日の公式会見で「明日はオーストラリア戦から大幅にメンバーを入れ替えて戦いたい。これまでもメンバーを入れ替えて、総合力でW杯をつかみ取ってきた。それを明日は証明したい」と意気込んでいた。

 ところが現実は、これまで固定したメンバーで戦ってきたツケなのか、組織的なプレーはほとんど見られなかった。

 初ゴールが期待された久保建英とオーストラリア戦の殊勲者である三笘薫は、タイプは違うものの2人ともドリブラーである。

 ワイドに開くのはいいが、2人とも足元でボールを受けてドリブルを開始する。このためSBの山根と中山雄太には攻撃参加するスペースがなかった。久保と三笘が、山根と中山の攻め上がりに“蓋”をしたような格好だ。

 それでも2人がドリブルでベトナムDF陣を崩せればいい。しかし最下位のベトナムは5BKにして守備を固め、さらに中盤の4人も守備に回り、2~3人がかりのマークで2人の突破を阻止した。

旗手を殺した攻撃パターン

 日本の中盤は柴崎岳をアンカーに、右にベテランの原口元気、左にこの試合が代表デビューとなる旗手怜央を置く4-3-3のフォーメーション。しかし、遠藤航、守田英正、田中碧の3人による4-3-3とはまったく別物の4-3-3だった。

 後者の場合は3人が両SBと連係しながらパスを出し入れして、相手をつり出しながら守備を剥がしていく。

 ところが前者の3人だと、アンカーの柴崎にボールを集め、彼からの展開で攻撃を組み立てていた。1人のゲームメーカーが攻撃陣をリードする、いわゆる“中盤の将軍”スタイルである。

 このクラシカルなサッカーでは、パスの出所が1カ所なので守る方も予測しやすい。1トップの上田綺世へのパスにはCBが厳しくアタックに行き、両サイドに展開されたら1対2か1対3で突破を阻止していた。

 この攻撃パターンで持ち味を発揮できなかったのが旗手だった。時折、三笘とのタテ関係からパス交換でカウンターを仕掛けられたものの、旗手が攻撃の起点になる回数はかなり限られた。できれば田中や守田と一緒にプレーさせたかっただけに、残念なデビュー戦となった。

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