客に迫られても絶対NO… 42歳“不人気”メンズエステ嬢の「プライド」と「V系バンド」

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 最近、男性と話していると「メンズエステ(メンエス)」の話題になることが多い。表向きは「健全」なマッサージ店を謳っているが、裏メニュー、あるいはセラピストとの交渉によっては……という点が魅力らしい。もっとも、エステの看板だけで事実上の風俗店になっているところも少なくない。今回話を聞いたのは、そうした風潮に真っ向から異を唱える、頑固な“メンエス職人”だ。【酒井あゆみ/ノンフィクション作家】

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 メンエスによくある「名字だけ」の源氏名にならい、ここでは彼女を北条(仮名)と呼ぼう。店での年齢は37歳だが、実際は42歳。メンエス歴は5年と業界ではベテランだ。現在、3つの店舗を掛けもちして働いている。

「メンエスに来る男性たちは風俗店での決まったサービスに飽きてるんだと思います。だから『もしかしたら』というギャンブルに近い感覚で遊ぶのではないでしょうか」

 と、北条は自身の仕事を分析している。本来メンエスは「セラピストに触らない、脱がせない、射精しない」が原則。せいぜい「密着」「鼠蹊(そけい)部マッサージ」サービスの際に、“偶然触ってしまった”という思いがけない「事故」を楽しむ趣旨である。そのうえで、もしセラピストと仲良くなれば、それ以上のこともある「かも」しれない……というわけだ。

 ただ北条が「ギャンブル」に例えたのは言い得て妙である。賭け事は勝ってこそ楽しい。結局はセラピストに“過剰なサービス”を求めるのが男性の心理だが、北条はそれにまったく応じたことがないのだ。

「どうしても我慢できない、って言われたら『シャワー室とか私の見えないところで自分でお願いします』ってキッパリ言っちゃう。だって、メンエスって本来は射精してはいけない遊びなんですから。私たちにギリギリの場所をマッサージしてもらい、性的な感情は家に帰って発散する。それがそもそもの楽しみ方なんです」

 元々、過剰なサービスが前提の「性感マッサージ」店にルーツをもつメンエスは、「回春マッサージ」の名称を経て、現在の形になった。北条の言う通り、どの店も表向きは〈当店は風俗店ではありません〉と「健全」なマッサージであることを謳っている。だがそれは建前に過ぎない。多くは法の目を逃れるための方便だ。

 だが、今では原点回帰とでもいうべき、性的サービスが前提の「風俗系エステ」が主流になりつつある。こうした変化の理由は働く女性が“変化”したためだと北条は指摘する。

「サービスどころか、客と本番行為をする『過剰サービス』の女子は珍しくありません。私が働いている店にだっています。そりゃ、働く側からすればその方が楽ですよ。汗だくになりながらマッサージしなくたって、股を開けば良いんですから。それに、技術を正しく教えられる講師の女性も減った。セラピストと風俗嬢の違い、境界線がどんどん曖昧になっているんです」

 メンエスの風俗化を加速させた背景には、コロナ禍があると私は考えている。コロナによって濃厚接触が避けられるようになり、風俗店は流行らなくなった。その点、粘膜の接触がないメンエスは比較的安全なジャンルで、コロナの痛手は風俗業界よりは少なく済んでいた。だが、コロナの影響で出勤制限をかけられ働く場所がなくなった風俗嬢がそこに目をつけ、メンエス業界に流れた。結果、楽をするために禁止プレイをするセラピストが急増したのだ。

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