阪神「大トラ騒動」でファン13人搬送…コロナ禍では懐かしさもある「酔っぱらい」の珍騒動

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 コロナ禍による入場者数制限や球場内での酒類販売自粛など、スタンド観戦の野球ファンは、足掛け3年にわたって、我慢の日々を強いられている。以前のようにスタンドでお酒を飲みながら大声を張り上げて、贔屓チームを思う存分応援できる日が1日も早く戻ってきてほしい。そんな願いを込めて、平成以降、球場で見かけた酔客にまつわるエピソードを振り返ってみた。【久保田龍雄/ライター】

「タヌキみたいな顔しやがって」

 完全試合を逃した試合後、球場の裏通路で酔っぱらった相手チームのファンにからまれたのが、ヤクルト時代の吉井理人である。1996年6月6日の横浜戦、吉井は7回までパーフェクトに抑えたが、5対0の8回、先頭の4番・ブラッグスに初安打を許し、ついに記録ストップ。さらに2死後、四球と畠山準の二塁打で1点を失い、完封も消えた。9回は3者凡退に打ち取り、1失点完投勝利を挙げただけに、8回の2安打と四球が惜しまれた。

「フォークがばてるのが早かった。世間の厳しさを思い知らされました」と吉井はガックリ。また、野村克也監督も「一世一代はあまりやらんほうがええ。限られている運は長く使わんとな」と慰めつつも、「あそこまで行ったら、やらせたかったな」と残念がった。

 そして、試合後に思わぬハプニングが起きる。

 酒を飲みながら盛り上がって観戦し、試合終了後、千鳥足で出口に向かっていた横浜ファンの男性3人組が、あろうことか、三塁側ヤクルトベンチ裏の通路に迷い込み、吉井とバッタリ遭遇したのだ。

 ベイファンたちは、わずか2安打に抑えられて完敗した腹いせもあって、「タヌキみたいな顔しやがって」と酒の力を借りて、吉井にからみだした。だが、吉井が毅然とした態度で「何だ、お前ら!」と一喝すると、酔客たちはたちまちシュンとなり、直後、駆けつけた警備員に取り押さえられた。

 完全試合は逃したものの、番外編の“延長10回”に3人を「パーフェクトでピシャリ!」というオチもついた吉井は同年、2年連続二桁勝利を達成している。

グラウンドにドシーンと落下

 スタンドからファンがグラウンドに落下するアクシデントが、勝敗に影響する事態を招いたのが、2004年5月11日の巨人vs阪神だ。

 6対6の8回、阪神の攻撃中、髪を金色に染め、オレンジ色の法被を身にまとった、巨人ファンらしき若い男性が突然、一塁側巨人ベンチ上の金網をよじ登りはじめた。

 ところが、約3メートルの最上部までたどり着いた直後、バランスを崩し、ベンチの屋根に鼻から転落。そのまま勢い余って、グラウンドにドシーンと落下した。あまりのことに、5万5000人の観客も騒然とし、試合は3分間中断した。

 大量のアルコールを摂取して泥酔状態の男性は、顔面を強打しておびただしい鼻血を流し、うつろな表情。そのまま担架で運ばれ、救急車で病院に急行したが、大事には至らなかった。

 一方、巨人・堀内恒夫監督は、目の前で起きた突然のアクシデントに、「誰かがオレンジのタオルを投げ込んだのかと思った。ああいうのはダメだ。いいゲームだったのに……」と、試合をぶち壊しにした闖入者に怒りの矛先を向けた。

 しかし、一番の被害者は、マウンドにいた岡島秀樹だった。酔っぱらいの転落シーンに苦笑いの表情を見せ、表面では平静を装ったが、1死一塁で試合再開後、アリアスに決勝三塁打を許し、不運にも負け投手になってしまった。

 にもかかわらず、「(影響)それはない。コントロールが甘かった」と自分を責める岡島に対し、捕手の阿部慎之助は「あいつのせいだよ。あそこから流れが変わった。損害賠償を取れないの?」と怒り心頭だった。

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