“よき敗北者”の星稜が壁を乗り越えた…マーガード真偉輝キアンの好投と「トリックプレー」で天理を翻弄

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「これまで見てきた中でも1、2の出来」

 しかし、それでも難敵である天理に競り勝てたのには、当然、理由がある。まず大きかったのは、先発したマーガード真偉輝キアンの好投だ。彼は、プロのスカウト陣も注目する好投手である。

「これまで見てきた中でも1、2の出来だった。ブルペンでも強いボールを投げていたし、立ち上がりから飛ばしていた」(林監督)

 マーガードは、天理の強力打線を相手に、序盤の3回はパーフェクトに抑え込んだ。ストレートこそ130キロ台中盤だったものの、カットボール、ツーシーム、フォークなどの変化球を見事に操り、上位打線にもほとんど仕事らしい仕事をさせなかった。味方打線がチャンスを逃しても、天理に主導権を握らせなかったのは、彼の好投があったからだろう。

 マーガードは、延長に入ってからも攻めの姿勢を崩さなかった。2点を勝ち越した11回表の攻撃前、林監督は円陣で選手たちに対して「俺は(延長13回からノーアウト一・二塁で始まる)タイブレークは嫌いだからな」と笑いながら伝えて、12回までに試合を決めようという話をしたという。

 天理の中村良二監督は、試合後の共同インタビューで、マーガードの投球について、以下のように語っている。
 
「すべての面において、星稜のほうが上でした。点差以上のものを感じたゲームになった。(マーガードについては)カットボールなのか、スライダーなのか、研究はしていたが、これほど(の実力)とは思わなかった。なかなか攻略することができませんでした」

言葉と走塁が“攻める姿勢”を象徴

 さらに、星稜は、走塁面で巧みな攻撃を見せてくれた。

 11回表、星稜はスクイズを失敗した後、ツーアウト一・三塁の場面で仕掛けた。一塁ランナーがわざと飛び出して一・二塁間で挟まれ、その隙に三塁ランナーがホームを突くという“トリックプレー”を敢行した。

 このプレーは、狙い通りとはいなかったが、相手ファーストの三塁への悪送球を誘い、三塁ランナーだけではなく、一塁ランナーもホームに生還して2点を勝ち越し。これが決勝点となった。

 林監督は、試合後の共同インタビューで、“トリックプレー”について「あそこはちょっと練習してきたんですが、なかなか天理さんも警戒していましたので、思うようなプレーは出来なかったんですけど、結果はよかったかなと思います」と振り返った。

 インタビュアーから「星稜高校らしい機動力を見せられたのでは?」と問われると、林監督は、こう続けた。

「そうですね。まだまだだとは思いますけど、次の試合に向けてしっかりといい準備をしたいなと思います」

 一塁から一気に生還した、キャプテンの佐々木優太は「送球が逸れた瞬間に絶対に自分もホームに還ると思って走りました」と話していたが、その言葉と実際の走塁も“攻める姿勢”を象徴したものだった。佐々木によると、今年のチームはどんな展開になっても「面白くなってきたぞ」と全員で言い合うのを常にしているという。

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