“よき敗北者”の星稜が壁を乗り越えた…マーガード真偉輝キアンの好投と「トリックプレー」で天理を翻弄

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星稜は今大会で35回目の甲子園

 3月19日に開幕した選抜高校野球。出場32校が全て登場するまでの期間、目に付いた選手、プレーについて独自の視点から掘り下げて、現地からレポートしていきたい。今回、ピックアップするのは、22日に行われた第4日目、天理(奈良)対星稜(石川)である。【西尾典文/野球ライター】

 やはり、もつれる展開になるのかと感じたファンも多かったのではないだろうか。大会第4日の第2試合、甲子園の常連校対決は、延長11回の熱戦を星稜が制して2回戦進出を決めた。

 特に、星稜は、これまでも甲子園の歴史に残る試合を数多く繰り広げられてきたことでも知られている。古くは1979年夏、この年春夏連覇を達成する箕島(和歌山)に延長18回にわたる死闘の末に敗れたが、この試合は甲子園歴代最高のゲームという声も多い。

 92年夏には松井秀喜(元巨人など)が明徳義塾(高知)の5打席連続敬遠を受け、チームが敗退して“社会現象”となったほか、近年では奥川恭伸(ヤクルト)を擁しながら、準優勝に敗れた19年夏が記憶に新しい。
 
 今大会で春夏合わせて35回目の甲子園出場となる。だが、いまだ優勝経験はなく、OBの筆頭格である松井も2019年夏の準優勝の際に「ここで優勝できないのが星稜。母校のそういうところも大好きです」と語っている。

攻守の拙さがある意味“星稜の伝統”

 常にそんな「グッドルーザー」(よき敗北者)たる所以が、この試合でも随所に見られた。

 4回表に1点を先制し、8回には貴重な追加点を挙げながらも、その裏にバント処理のミスからピンチを招くと、相手の9番打者に甘く入ったボールをとらえられて同点に追いつかれている。

 星稜の林和成監督は試合後、「その前に伝令を送った場面で投手交代させるべきだった。継投が1人遅れた」と話しており、後手に回った感は否めなかった。

 また1点を勝ち越した後の10回裏にもツーアウト、ツーストライクまで追い込みながら、勝負を焦って同点タイムリーを浴びている。この日それまでの打席でノーヒットだったとはいえ、相手打者は4番の内藤大翔だったことを考えると、もっと慎重に攻めるべきだった。

 思い通りにいかなかったのは、守備面だけではない。攻撃においても、6回、11回と2度しかけたスクイズはいずれも失敗に終わっている。天理の5安打に対して2倍近い9安打を放ち、そのうち6本が長打だったことを考えても、もっと早く試合を決められていた可能性も高かっただろう。

 このあたりの攻守の拙さが、ある意味で“星稜の伝統”と言える部分でもある。

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