ロシアで「プーチン支持率70%超」報道の胡散臭さ 実際のところはどれくらいなのか?

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口コミの威力

 オフシャンニコワさんの行動は、ロシア国民の世論を変えてしまうだけのインパクトがあるという。

「指摘したいのは、特に農村部への影響です。農村の高齢者はインターネットに触れていないので、ウクライナ侵攻に関する知識はそれほどなかったはずなのです。ところが、この『ブレーミヤ』という番組は、喩えて言うならNHK総合の『NHKニュース7』(毎日・19:00)や、『ニュースウオッチ9』(平日・21:00)といった番組以上の影響力を持っているのです。農村部の高齢者には、毎晩、必ず『ブレーミヤ』を見て寝る、という人も少なくありません。彼らは今、『何が起きたのか』と驚き、情報収集を行っているはずなのです」(同・中村教授)

 ネットをあまり使わない高齢者は、どうやって情報を集めるのか。

「ソ連崩壊の時もインターネットはありませんでした。ロシア人は親しい人との会話や、農村部に住む高齢者の場合は電話で都市部に住む孫から教えてもらったりすることで、共産党が追い詰められていることを把握したのです。今は経済制裁による苦境も口コミのネットワークで情報が流布しているはずですが、それにオフシャンニコワさんのことやウクライナの情勢などが加わっているはずです」(同・中村教授)

第1チャンネルの腐敗

 プーチン政権としては、オフシャンニコワさんを黙らせたいが、厳罰に処すると“やぶ蛇”になるリスクも承知しているという。

「もしオフシャンニコワさんが突然、消息不明になったら、欧米のメディアは大きく報道するでしょう。重い懲役刑が科せられても同じです。強攻策に出ると、欧米だけでなくロシア国民からもオフシャンニコワさんの擁護論が高まるかもしれません。最悪の場合、ロシア人のプーチン政権打倒の運動に火を付けてしまうかもしれないのです」(同・中村教授)

 複数の識者が「戦争反対の紙が画面に映った瞬間の不自然さ」を指摘している。中村教授も「同感です」と言う。

「女性アナウンサーの背後で大ハプニングが起きたにもかかわらず、彼女は振り向きもしませんでした。カメラマンも微動だにせず、綺麗な状態で『戦争反対』の文字が映し出されました。何らかの形で事前に打ち合わせをしていた可能性はあると思います。そもそも第1チャンネルこそ、プーチンの腹心がトップに据えられたという政権の腐敗を象徴するようなテレビ局なのです」

 そうしたテレビ局の現状を憂いていた人々が、ウクライナ侵攻で「反プーチン」の決意を固め、オフシャンニコワさんに協力した──こんな可能性もあるという。

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