選抜高校野球“滑り込み出場”から決勝戦に駆け上がった「幸運なチーム」

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 第94回選抜高校野球がいよいよ3月18日に開幕する。各地区の最後の出場枠をめぐっては、毎年のように議論が白熱しているが、昨年は、秋の関東大会準々決勝敗退ながら、東京大会準Vの日大三を制して最後のイスを獲得した東海大相模が優勝するなど、過去にはギリギリの滑り込み出場から大躍進したチームも少なくない。【久保田龍雄/ライター】

「さすが智弁という試合をする」

 地区大会で“未勝利”だったにもかかわらず、甲子園で圧倒的な実力を見せつけて勝ち上がったのが、2000年の智弁和歌山である。前年秋の近畿大会では、1回戦で東洋大姫路に1対3で敗れ、選出の「最低ライン」とされるベスト8にも届かなかった。

 普通なら落選でもおかしくないケースだが、8強入りした大阪勢3校のうち、上宮が準々決勝でコールド負け、橿原や高田商といった奈良県勢も準々決勝で揃って完敗したことから、和歌山1位校という地域性で浮上する。

 最後の7枠目を上宮、高田商と争った結果、「(4強の)東洋大姫路と互角以上の戦い」という理由で逆転選出された。ただし、その潜在能力の高さから、関係者の間で「出場すれば、間違いなく優勝候補になる」と囁かれていたのも事実だった。

「選んでもらった選考委員に恥をかかせない。さすが智弁という試合をする」(堤野健太郎主将)と甲子園での上位進出を誓ったチームは、1回戦で丸亀に20対8と大勝。2回戦の国士舘戦も1対4の8回2死から、一挙8得点で逆転と驚異的な底力を見せ、準々決勝では、大会ナンバーワン右腕・香月良太(近鉄・オリックス→巨人)を擁する柳川に1対0で競り勝った。

 さらに準決勝でも国学院栃木を10対2と一蹴。決勝では東海大相模に2対4と惜敗したが、高嶋仁監督は「夏に向けていい経験ができた」と大きな手ごたえを掴んだ。そして夏の甲子園、智弁和歌山はチーム打率.413、通算100安打、通算11本塁打と、いずれも大会記録を塗り替える圧倒的な強さで堂々と頂点に立った。

 09年の花巻東も、秋の東北大会準決勝敗退ながら、同じ岩手県代表で準優勝の一関学院より「総合力で一枚上」と評価され、逆転で最後の2枠目をゲット。甲子園では、エース・菊池雄星の力投で準優勝を勝ちとった。智弁和歌山、花巻東はともに、選考委員の目の確かさが証明された好例と言えそうだ。

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