高齢者はコロナより肺炎に注意すべき? 外出自粛より重要な対策とは

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嚥下機能低下の原因

 3回目のワクチンを打ち、マスク着用や手洗いを改めて徹底するしかなさそうだが、自力で動けない高齢者には逃げ場がない。となると肺炎の予防措置が、ことのほか大事になってくるだろう。大谷院長が言う。

「予防としては、まず肺炎球菌ワクチンを打っていただくこと。口腔ケアも大事です。口のなかの細菌を減らすことは、誤嚥性肺炎の予防効果にエビデンスがあります。私は毎食後に5分と寝る前に10分は歯磨きをしますが、最低5分程度は磨いたほうがいいです。また、誤嚥は寝ている間に起きるので、特に寝る前は口のなかをキレイにしておきたいです。そして、誤嚥や逆流を防ぐために、食後90分は横にならない。寝る前になにかを食べることもお勧めできません」

 寺本教授が加えるには、

「口腔ケアを行うことで、肺炎の発症率が半減したというデータもあります。歯磨きに、歯間ブラシやマウスウォッシュを併用しても効果的です。要介護の方であれば、家族が代わりに口腔ケアを、こまめに行ってあげてください」

 再び大谷院長が言う。

「コロナ禍で人と会う機会が減ったことも、嚥下機能低下の原因の一つかもしれません。喋る筋肉と飲み込む筋肉は似た場所にあるので、喋らなくなると筋肉が余計に落ちてしまう。電話やズームでもいいので、友人やお孫さんと喋ってほしいですね」

自粛よりも免疫を高める

 當瀬教授は、免疫力を高めるためにこう提唱する。

「散歩やウオーキングを勧めます。いま感染を警戒して外出を控え、自宅にこもりがちな高齢者は多いですが、運動不足になると体力も落ち、結果的に免疫力の低下を招きます。ウイルスを撃退する免疫機能を損なわないためにも、日々の生活に軽い運動を取り入れることは重要です」

 また、食事にも留意すべきだという。

「特に高齢の方は、免疫機能を調整する働きがあるビタミンCとビタミンDの摂取を心がけてほしい。前者はピーマンやジャガイモなどの野菜のほか、イチゴやキウイなどの果物に多く含まれ、後者はサケやイワシなどの魚やキノコ類などが多く含む。ビタミンCとDを意識しながらバランスよく食べることで、免疫力の向上につなげられます」

 ところで、冒頭で指摘したが、いま高齢者がさらされている肺炎の危機は、コロナ禍の特殊な状況ではない。冬場はこれまでもそうだったし、今後も繰り返されるだろう。老年医学が専門の和田秀樹氏が言う。

「毎年、肺炎で亡くなる約10万人の97%以上は、65歳以上の高齢者だといいます。風邪のウイルスは原則的に上気道炎で止まり、肺にまで侵入しませんが、肺気腫がある人はそれで亡くなることがあるし、高齢で免疫が低い人は、細菌性の肺炎に陥って亡くなってしまう。その場合も死亡診断書には“肺炎”と書かれるので、もともとの原因が風邪であるようには見えません。しかし、肺炎で亡くなった方のうち、どんなに少なく見積もっても1~2割は、風邪をこじらせた結果だと考えられます。1年にコロナで亡くなる方が1万人だとして、毎年、同じくらいの人数が、風邪をこじらせて亡くなっていることになる。なので、リスクがある方は肺炎にならないように気を付ける、という基本的な話に戻ってくると思います」

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