高齢者はコロナより肺炎に注意すべき? 外出自粛より重要な対策とは

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症状が軽いわけではない

「私たちの病院では、第6波だけでオミクロン株に感染した400人近い患者さんを診療し、一部入院していただきました。そのなかにはデルタ株のときと同様、肺が真っ白になっている人もいましたが、それ以外の多くは、おそらく細菌性肺炎、それも誤嚥性肺炎を発症していました」

 こう語る池袋大谷クリニックの大谷義夫院長(呼吸器内科)に、これらの肺炎について解説してもらう。

「たとえばインフルエンザウイルスなどに感染すると、免疫力が下がり、二次性の細菌性肺炎を合併することがありますが、同じことがオミクロン株でも起きています。高齢者が感染すると、加齢によりもともと免疫力が低くなっているため、上気道の炎症を契機に免疫力がさらに下がり、肺炎球菌などが原因で細菌性肺炎や誤嚥性肺炎を起こすことが多くなっています」

 そのメカニズムだが、

「誤嚥性というと、食べ物が間違って気道に入ってしまうイメージを持たれがちですが、そうではありません。夜間などに口腔内細菌を含んだ唾液や、逆流性食道炎で逆流した胃酸と唾液が混じったものが、間違って気道に落ちて肺炎を引き起こします。本来は誤嚥しても、肺のなかの免疫であるマクロファージが戦って、倒してくれますが、免疫力が低下していたり、細菌の量が多かったりすると、負けてしまうのです。オミクロン株に感染したうえに誤嚥を起こすと、上気道にあるオミクロン株が直接肺まで入ってくることもあります。あるいは、誤嚥した口腔内細菌の増殖を抑えられず、肺炎になるのです」

「家庭内感染の収束スピードが遅い」

 また、“二次災害”だからといって、症状が軽いわけではないという。

「最初は症状がマイルドでも、急激に悪化して、呼吸不全になることも珍しくありません。そのうえ誤嚥性肺炎は、抗生物質で治癒しても、ぶり返すことが多い。飲み込む筋力や咳でウイルスを外に出す力の衰えなど、老化に起因するだけに、原因を根本的に取り除くのが難しいのです。若い人は誤嚥しても、抗生物質を処方して終わりですが、高齢者の誤嚥性肺炎には特効薬がなく、やっかいです」

 オミクロン株が普通の風邪に近いものになったところで、高齢者にとっては決して侮れない、ということである。それなのに、いまも80~90代に感染が広がる傾向にあるという。原因として、當瀬教授は、「家庭内感染の収束スピードが遅いこと」を挙げる。

「家庭内で子供たちから親へと感染し、親の勤務先の介護施設や病院などで高齢者に広がっていく、という構図です。オミクロン株は罹患しても無症状のことが多いため、感染者や濃厚接触者が無自覚に感染を広げているケースが少なくない、と考えられています」

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