ウクライナ侵攻で欧米が仕掛けた「金融戦争」 日本経済に与える計り知れないダメージとは

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西側が仕掛けた「金融戦争」

 ウクライナに侵攻したロシアへかつてない世界的な経済制裁が始まった。銀行間の国際送金システムSWIFTからロシアの主要銀行の排除を決めたほか、ロシア中央銀行の他行との金融取引を禁止し、ロシア国外にある同国の外貨準備を事実上凍結した。果たして、この経済制裁は効果を上げ、ロシアに停戦を迫ることができるのか。

「ロシアに対する経済制裁は、当初想定されていたものよりもかなり厳しいもので、ロシア経済への打撃は甚大だと思います。ロシアの軍事侵攻に対して、西側諸国は軍隊を送り込む代わりに『金融戦争』を仕掛け、反撃し始めたと言っていいでしょう」

 そう語るのは大手新聞のデスク。もはや「経済制裁」の域を超え、「金融戦争」に突入したというのだ。どういうことか。

「SWIFTから排除するということは、貿易代金が送金できなくなるということです。要するに、ロシアがエネルギーなどを輸出しても代金が回収できなくなるわけです。これはフロー、つまり新たな経済取引を止める機能を持っている。代金が回収できなければ、ロシアは天然ガスなどの輸出を止めるしかありません。そのためロシア産天然ガスに依存しているドイツなどはSWIFTからの排除には賛成しないと見られていたのですが、“返り血”覚悟で制裁に同調しました。ドイツはロシアとの『金融戦争』に参戦を表明したのです。また、英国の石油大手シェルが石油ガス開発事業『サハリン2』からの撤退を決めるなど、西側企業がロシア企業との合弁解消に動いていますが、これもロシア経済を一気に疲弊させるでしょう」

通貨が紙切れの悪夢

 さらにロシア経済に大打撃となるのは、ロシア通貨ルーブルの暴落だと言う。

「通貨安に対抗するにはロシア中銀がルーブルを買い支える必要がありますが、外貨準備(直ちに利用可能な外貨建て資産のこと)を使うこともできず、買い支えができません。米国の措置はストック、過去の蓄積も使用不能にしたためで、金融戦争としてはこれが強力な威力を発揮します。ここ数日でルーブルは暴落しており、今後も下落が続くでしょう。そうなれば、ロシアは生活物資を輸入できなくなります。ソビエト連邦崩壊直後に通貨が紙切れ同然になった頃の悪夢を、ロシア国民は再び体験することになるでしょう」

 しかし、こうした経済制裁で、ロシアが戦争終結へと舵を切ることになるかというと、そう簡単にはいかないようだ。「経済制裁に耐えられずに軍を引いたとなると、プーチン大統領の面目は丸潰れになり、事実上の『敗け戦』になる。それだけは避けたいはず」と、安全保障に詳しい元外務官僚が語る。

「ウクライナに傀儡政権を作り、非武装化、中立化を実現できたとしても、ウクライナ国民がその政権に反発することは目に見えています。そうなると西側諸国の経済制裁は長期化することになるでしょう。

 プーチンは大軍でウクライナに侵攻すれば、ゼレンスキー大統領は早々に国外へ脱出すると見ていたと思いますが、予想に反して大統領は国民に徹底抗戦を呼びかけ、本格的な戦争になってしまった。親戚や友人が多く住む『兄弟国』での戦闘にロシア軍兵士の士気は上がりません。

 一方、西側は経済制裁でロシア国民の生活が疲弊すれば、国内でプーチンへの批判が強まり、失脚するというシナリオを描いていますが、それも簡単ではない。なかなか終わりが見通せない状況になっています」

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