「プーチン失脚のシナリオを考えなければならない…」外務省幹部が語るウクライナ侵攻の落としどころ

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核戦争のリスクは

 気になるのは追い込まれたプーチン大統領が暴走するリスクです。またアメリカのインテリジェンス情報に触れることができるマルコ・ルビオ上院議員が28日「プーチン氏は明らかに何かおかしい」とツイートするなど、ここに来てプーチン大統領が精神に異常をきたしているのではないかという懸念が出てきています。これについて外務省幹部は「確たる情報はないが、そうでないことを願うしかない」と話しています。

 プーチン大統領は27日、核兵器を運用する部隊に「任務遂行のための高度な警戒態勢」に入るよう命令しました。これに対して日本政府関係者は「核兵器を使用するという前兆は把握していない。使う必要があるとも思えず、ブラフだろう」と話しています。しかし、プーチン大統領がもし正常な判断ができないのだとしたら、危険度が一気に高まるため、政府内にも緊張感が漂っています。

鍵となる中国への働きかけ

 ここで重要なカギを握るのが中国の動向です。中国は軍事侵攻については支持しない一方で、ロシア産小麦の輸入拡大など経済的な支援は行う姿勢です。そして事態の推移を台湾統一に向けた格好の研究材料にしようと目を凝らしてみています。外務省幹部はこう語ります。

「中国は今のロシアと心中する気はないけど、立場はなかなか変えないだろう。『戦略的曖昧さ』だよ」

 しかし、プーチン大統領にとっては中国の経済支援が大きな拠り所です。岸田首相、林外相を始め日本政府は今こそ中国とのパイプを駆使して、中国がプーチンの暴挙を抑える側に回るよう働きかけを強めるべきです。そして力による現状変更が、大きな代償を伴うことを思い知らせなければなりません。自民党幹部はこう語ります。

「この事態を中国の台湾への野望をくじく、きっかけにしなければならない」

「自由と民主主義の最終戦争」

「これは自由と民主主義の最終戦争だ」

 戦闘が続く1日、林外相は周辺に対して力を込めました。権威主義国家が「正しいかどうかは別として有利」と思われる世界にしてはならない。時代の大きなターニングポイントを迎えてこの国は何をすべきなのか、我々国民も注視していかなければなりません。

青山和弘(あおやま・かずひろ)
政治ジャーナリスト 1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員 92年に日本テレビに入社し、94年から政治部。野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。与野党を問わない幅広い人脈と、わかりやすい解説には定評がある。現在、各種メディアや講演などで精力的に活動している。

デイリー新潮編集部

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