誰が大統領になっても韓国は「内紛の時代」へ 「レミング」が生む李朝への先祖返り

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韓国人はレミングだ

・『ハーメルンの笛吹き男』という童話で、笛を吹く男の職業はネズミ取りである。彼は自身の笛でネズミを操り、すべてのネズミを川に導き入れて退治する。
・実際、動物の世界では童話に登場するネズミのような「集団自殺」が存在する。代表的な動物は欧州北部地域に生息するレミングだ。
・現在、[集団自殺に関する]もっとも有力な説は個体数を調整するための自発的な行動であり、群集心理による自己破壊行動(レミング効果=Lemming effect)とのことだ。
・とても愚かな行動だが「レミング効果」は人間の世界でも見かけられる。 
・李明博大統領執権当時の2008年の狂牛病ろうそく集会事態、そして崔善実[チェ・スンシル]ゲート事件によって触発された、いわゆる民衆総決起集会などが「レミング効果」といえる。

「シンシアリー」の筆名で日本語のブログを書く韓国の歯医者氏も、しばしば韓国人をレミングに例えます。「反日という名の、レミングス」(2022年1月16日)では「俗説かもしれない」としつつ、「語源」を記しています。

・1980年、当時在韓米軍司令官だったジョン・ウィッカム氏が、「韓国の人たちはレミングスのようだ。ただ指導者の後ろに列を作るだけだ。彼らに、民主主義が似合わない体制ではないだろうか」と話したことがあります。

 朴正煕大統領が暗殺された後、韓国は民主化に向け動き出した。というのに、国民はクーデターを起こした全斗煥少将らについていった、と当時の在韓米軍司令官は驚いた、というのです。

「党争こそは議会政治の原点」

 もっとも「レミング化」に対する警告は韓国人の耳に届きそうにありません。人は怪しげな情報に踊らされてデモに参加しても、自らの意思で行動したと思い込むからです。

 さらに今の韓国人の多くは「大衆行動こそが民主化の証であり、飼いならされた日本人と比べ自分たちは高級な政治風土を持つ」と信じ込んでいるのです。もちろん、指導層に吹き込まれた結果です。

 韓国人の自省の源だった「李朝の欠陥」という苦々しい記憶も抹消され始めました。「李朝は近代化に向け歩み始めていたが、日本の植民地化により頓挫した」との歴史観が20世紀末頃から急速に広がったからです。

 韓国人にとっては極めて心地よい歴史観です。それまでの「李朝の欠陥により日本に併合された」という見方に立てば、植民地への転落は自分たちの責任になってしまう。でも、新しい歴史観を持ち込めば「すべて日本が悪い」と言い張れるのです。

 李朝滅亡の淵源だった「党争」も政党政治の原点と再評価されるに至りました。歴史家の朴永圭(パク・ヨンギュ)氏が1996年に上梓し、200万部売れたという『一冊で読む朝鮮王朝実録』がそう説いています。日本語版の『朝鮮王朝実録』から引用します。

党争性悪論も日本の陰謀

・宣祖[ソンジョ]が構想していた党派中心の臣権政治は近代的政治形態である議会政治を導き出せる基盤となり得るものだった。(183ページ)
・党争、すなわち朋党政治では、相互牽制し、対立するのが、実は相互共存する方法だった。朋党政治の本質的な趣旨は、まさに一党が権力を独占するのを防止するところにあるからだ。こうした原理は現代の民主政治においても同じく作用している。(191ページ)

「李朝の呪縛」をうち破らんとする意気込みが伝わってきます。そして、朴永圭氏は「党争性悪論」も日本のせい、と主張したのです。

・韓国人は党争で朝鮮が滅びたという認識を強要されてきた。日帝強占期に日本により強要された、こうした植民地史観の根本問題は、まさに朋党政治に対する正しい認識が欠如していたことによるものだ。(191ページ)
・したがって、好ましくないと思われる党争、すなわち朋党政治は、決して植民地史観によって強要されたような「亡国的な権力争い」ではなかったのだ。(191ページ)

 朴永圭氏の「党争正当論」の根拠は、李朝初期の外戚政治よりも近代的であるという点にあります。しかし、だからと言って血で血を洗う党争が肯定的な結果をもたらしたことにはなりません。

 現に、李朝が消滅して100年以上も過ぎた今も韓国は党争の後遺症に苦しんでいる。それも「党争の大衆化」の結果、李朝時代とは比べものにならないほど党派の間での妥協が難しくなっているのです。

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