“プロ注目”150キロ左腕は「解体新書」杉田玄白の子孫 トヨタ自動車・長谷部銀次はどんな選手なのか

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ピンチの場面でのリリーフ

「日本選手権は、満塁の場面で何も考える余裕がなくて、ただ4球投げたというだけでした(結果は空振り三振)。それに比べると、都市対抗は落ち着いて投げられたと思います。(ヒットと四球で2人の走者を出して降板した)最後のイニングは、自分の課題が出ましたが、それまでは思い通りに投げられました。また、昨年は、オープン戦も公式戦も、ピンチの場面でのリリーフで投げることが多く、ランナーがいる中で投げることは全く苦にならなくなりました」

 都市対抗では最速147キロをマークし、2つの空振り三振を奪った。持ち味であるストレートは社会人になってからも磨きをかけ続けている。

「自分が評価して頂いているのは、やはりストレートだと思いますので、さらに磨いていきたい。回転数などのデータを見ると、自分のストレートは回転効率が悪くてスライド気味でした。昨年は、兼任コーチだった細山田武史さん(元DeNA、今年からコーチ専任)にボールを受けてもらいながら、改善に取り組んだ結果、ストレートの回転効率が良くなって、ベースの上で強いボールになってきたと思います。今年は、先発にも挑戦したいので、投げる体力をつけるためにシーズン前にしっかり強化していきます」

教科書に出てきて「おお!いるやん!」

 少し話が逸れるが、長谷部がにわかに注目を集めている背景に、江戸時代の解剖学書「解体新書」で知られる杉田玄白の子孫ということも少なからず影響している。高校時代には家系図を紹介するスポーツ紙もあったほどだ。そんな偉大な先祖を持つことも本人はプラスにとらえている。

「両親から聞いてそういうご先祖様がいるのは知っていました。中学の時に教科書に出てきて『おお!いるやん!』と思いましたね(笑)。特に、ご先祖様を意識したことはないですが、それをきっかけで注目してもらえることはありがたいなと受け止めています」

 いよいよ、今年はドラフト指名が解禁となるシーズンを迎えるが、最後にプロ入りへの意気込みを語ってもらった。

「プロに行くというのは、自分だけでコントロールできることではないですから、まずは自分のやるべきこと、チームを勝利に導くピッチングを第一に考えています。今年は先発として準備をしていますが、チームに必要とされれば、当然リリーフでもしっかり投げたい。そのために一日一日を大事にして準備していきたいと思っています」

 決して順風満帆とは言えない長谷部の野球人生だが、終始穏やかに、それでいながら力強さを感じさせる話しぶりには、大きな試練を乗り越えてきた強さが感じられた。念願のプロ入りへ向けて、今年はさらに進化した姿を見せてくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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