炎上参加者はどんな人間? 利用者の0.5%しかいない? 大規模調査で見えた意外な“素顔”とは

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糸井重里氏の炎上

 あるいは、一昨年、コピーライターの糸井重里さんのツイッターが、新型コロナウイルスに関しての発言で炎上したことがあります。

〈わかったことがある。新型コロナウイルスのことばかり聞いているのがつらいのではなかった。ずっと、誰かが誰かを責め立てている。これを感じるのがつらいのだ〉

〈責めるな。じぶんのことをしろ〉

 とツイートし、「自己責任で努力しろと言うのか!」などと多数の批判を浴びて真意の説明に追い込まれたのですが、このツイートも一方で10万件くらいの「いいね!」が付いていたことは、あまり知られていません。実際、私たちがこれについても調査をしたところ、発言に「共感できない」という人が16%だったのに対し、「共感できる」人は46%にも上りました。

 私が述べたいのは、森さんや糸井さんの発言の是非ではありません。集中砲火を浴びたかに見えるこれらの発言についても、実は世の方々の一定数は中庸で、賛否が拮抗していたのではないか、ということです。しかし、ネット上に現れるのは、声を荒らげての批判にしろ、あるいはそれへのカウンターとしての過剰な擁護論にしろ、両極端の議論ばかりです。

 すなわち、ネットとは現実の世論を必ずしも正確には反映しない、「歪んだ鏡」なのではないか、との疑いを強くするものなのです。

年間60回以上政治的テーマについて書く「ヘビーライター」

〈掴みどころがない「ネット世論」。それは果たして、誰によって、どのように形成されているのか。そこがわかれば、自ずとその実態や、向き合い方も見つかるはずだ。〉

 そのために、私たちは3年前、約2万人を対象にした調査を行いました。

〈と田中教授が続ける。〉

 これは、「憲法9条改正」「原発問題」「安倍政権への評価」の三つのテーマについて、過去にツイッターやブログ、掲示板などに意見を書き込んだことがあるかどうか、書き込み経験がある場合はその回数を回答してもらう、というものです。

「憲法9条改正」についての結果をお伝えしますと、調査対象者のほとんど、約95%の人が「過去に一度も書き込んだことが無い」と回答しています。続いて「過去に一度くらい書き込んだことがある」と回答した人が約2%、その余である「過去1年以内に書き込んだことのある」人は2.56%に過ぎませんでした。このテーマに関して、ネットに書き込む人自体がごく少数であることがわかります。

 この調査では、「過去1年以内に書き込んだことのある」という人については、その回数も答えてもらっています。頻度によって8段階に分けますと、最も書き込み回数が多かったのは、「60回以上書き込んだことのある」人たちでした。実に毎週1回以上の頻度で書き込んでいることになりますが、全体の割合でいえば、わずか0.23%に過ぎません。

 しかし、書き込み数で見ると驚くべきことがわかります。「過去1年以内に書き込んだことがある」人の書き込み数は、6195回でした。しかし、この0.23%の「ヘビーライター」は、先ほど述べたように、それぞれ1年で60回を超える書き込みを行っています。そのため、人数と、一人頭の書き込み数とを掛け合わせると、その数は約3千。すなわち、書き込み数の約50%にも達したのです。

次ページ:現実の人数分布と、書き込み数の分布の乖離

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