炎上参加者はどんな人間? 利用者の0.5%しかいない? 大規模調査で見えた意外な“素顔”とは

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 言動がネットで「炎上」し、著名人が謝罪、辞職に追い込まれる――。近年しばしば見られる光景である。が、ネットとは本当に世間の写し鏡か。そこに“歪み”や“ひび”はないのだろうか。力を増す「ネット世論」の実態を、慶應義塾大学の田中辰雄教授が詳(つまび)らかにする。

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〈昨年の東京五輪に際し、組織委員会の森喜朗会長や、開会式の音楽制作担当・小山田圭吾氏が発言や過去の行為を問われ、職を辞したのは記憶に新しいが、これらに「ネット世論」が少なからず影響したのは疑いのないところであろう。

 両者とも、ネット上で大規模な批判がなされ、謝罪に追い込まれたものの、「炎上」は止まらず、逆に勢いを増していった。これに抗せなくなり、事実上の「馘(くび)」となる「辞任」を余儀なくされたのだ。

 近年、こうした例は増していくばかり。著名人の言動が、ネット上、とりわけツイッターやブログ、匿名掲示板などで批判され、次々と拡散し、「世論」を形成していく。そして、それに当事者が怯え、謝罪し、時に身を引くという流れは、当たり前の光景となった。「ネット世論」はひとつの「権力」とでも呼ぶべき力を持って久しい。〉

正義について論じられる場合に影響力が増す

「ネット世論」は、「女性差別」だと非難された森発言に象徴されるように、わかりやすい“正義”について論じられている場合に、とりわけ大きな影響力を持ちます。

〈と述べるのは、慶應義塾大学経済学部の田中辰雄教授(計量経済学)である。教授はIT産業の計量分析を専門とし、それに基づいて『ネットは社会を分断しない』『ネット炎上の研究』などの著書を刊行した、この分野についての代表的論客の一人である。〉

 一方で例えば、新型コロナウイルス対策や、子宮頸がんワクチン接種の是非など、さまざまな意見を比較衡量しないと判断が難しい問題については、それほど影響力を発揮しません。ここにネット上での言論のひとつの特性が見られます。

 しかし、森会長の発言について、ネットではバッシング一色でしたが、私たちが改めて約1200名に調査をしたところ、それとは異なる結果が出ました。「発言は女性差別だったか?」との質問には、7割近くが「そう思う」「やや思う」と回答したものの、「発言は問題だが、辞任までする必要はなかったか?」という質問には、「必要ない」3割、「必要」4割と拮抗する結果となりました。

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