あさま山荘事件から50年 事件の舞台になった保養所に行ってみると…現在の所有者の外れた思惑

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観光目的で購入!?

 実は、「週刊新潮」2012年1月12日号に、この中国系法人に関する記事が掲載されている。この法人は1985年に香港で創立され、麻薬中毒の青少年などを更生させるキリスト教系の学校を運営。不動産投資にも乗り出し、巨額の利益を上げているという。

 法人の代表は「週刊新潮」の取材に答え、「不動産会社の広告を見て1300万円で購入した」、「事件について知ったのは購入を決めてから」、利用目的については「具体的な計画はまだ決まっていない」と話している。

 ただし、浅間山荘を購入後の2009年、法人の代表は香港の現地誌にこんなことを話している。

《あさま山荘事件からもうすぐ40年。50周年、半世紀たった時にはすごいぞ。1人1000円の入場料で充分だ》

 どうやら、浅間山荘を観光目的で使おうとしていたようだ。この2月で事件から50年を迎えるが、その皮算用は、当然、実現していない。たとえ観光スポットとして整備しても、こんな場所まで訪れる人はほとんどいないだろう。

記憶は風化、建物は現存

 軽井沢町内の不動会社で話を聞くと、「浅間山荘が今でも残っていることを、地元の人もあまり知らないと思いますよ。そもそも若い人や新しく移住してきた人は、あの事件が軽井沢で起きたことすら知らないんじゃないかな」と言う。

「コロナ禍もあって軽井沢に移住する人は増え続けています。ただし、人気なのは旧軽井沢や中軽井沢。浅間山荘がある南軽井沢の別荘地は、開発当初、『サラリーマンでも別荘が持てる』と謳われましたが、築年数が古い物件が多く、山深い場所にあるので、あまり人気がない。その分、価格は手頃ですが」(同・不動会社)

 事件の舞台になった山荘が、なぜ残されたのかについて訊くと、

「それは所有者が決めることですから私にはわかりません。ただ、事件が起きたのは建築されてからまだ3年くらい。建てたばかりの山荘を壊してしまうのはもったいないと判断したんじゃないでしょうか。あの建物は大きいほうだし、築年数も古くなってしまったから、今となっては逆に使いづらい。もし今、売りに出されたとしても、買い手が見つかるかどうか……」

 事件の記憶が風化されつつある中、なんの因果か、今もそこにに建ち続ける浅間山荘。新たな住人を迎え入れる日は、この先、訪れることはないのだろう。

デイリー新潮編集部

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