16億円を鮮魚に忍ばせる中国式ワイロ最新テク 習政権の“不正摘発アピール”の思惑は?

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 安物の時代劇では菓子箱に忍ばせた小判を悪代官に渡すシーンが登場するが、国が変われば袖の下の渡し方も違ってくるのだろうか。

 中国国営中央テレビが特別番組で汚職事件の詳細を放送したのは1月15日のこと。「零容忍」(一切容認しない)と題したこの番組は、15日も含めて5回にわたって放送され、ワイロを受け取った高官自らが懺悔する場面も出てくる。

 第1回は昨年9月に共産党から追放された元公安省次官の孫力軍だ。

 番組によると、孫は2011年の出張の際に知り合った元江蘇省政法委員会書記の王立科から毎年4~5回の訪問を受け、昇進の見返りとして鮮魚の盛り合わせに忍ばせた30万米ドルを受け取ったという。贈賄額の合計は約16億2千万円にものぼる。

〈なぜ、こんなに多くの間違いを犯してしまったのか〉

 とカメラの前で吐露する孫。罪人を引きずりだしてテレビで謝罪させる手法も中国らしいというべきか。

政府のアピール

 中国事情に詳しい拓殖大学の富坂聰教授が言う。

「孫力軍の不正は何度かテレビで報じられており、『零容忍』は総集編のようなもの。大事なポイントは、なぜ今放送するのかということです。そもそも汚職摘発は習政権の“一丁目一番地”ともいうべき政策。それが国民からも支持されていたのですが、近年は経済優先で大物の摘発も減っていた。しかし、今秋の党大会で習総書記は3期目を目指している。そこで、もう一度“政府は不正摘発も忘れていませんよ”とアピールしたいのでしょう」

 それにしても気になるのは、鮮魚の下に現ナマを忍ばせる手口である。

「魚の下に現金を仕込むのは中国でも一般的ではなく、孫のケースは露骨です。むしろ、今は巧妙になっており、一見ワイロに見えない手法が採られている。たとえば収賄側がガラクタを美術品オークションに出品し、贈賄側が高額で落札するといったやり方です」(同)

週刊新潮 2022年2月3日号掲載

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