アメリカでなぜ『人間失格』ブーム? きっかけは伊藤潤二のコミカライズと「文豪ストレイドッグス」

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「憂鬱な時代に、憂鬱な若者にアピールする、憂鬱な本」

 日米のポップカルチャーに詳しい、ライターのマット・アルト氏によると、

「この漫画の太宰治はデフォルメされていて、自殺愛好家になっています。アニメで太宰に興味を持つ若者が増え、TikTokでは、話題を共有するためのハッシュタグ#dazaiosamuの付いた動画が20億回以上も再生されています」

 それにしたって『人間失格』の世界がアメリカ人にウケようとは。

「社会の中に居場所を見つけられない若者がアメリカでも増え、社会に対して疎外感を抱く太宰のテーマは受け入れられやすくなっています」(同)

 先の柳田氏もこう語る。

「『人間失格』がアメリカのような本来“前向きな”社会の若者に刺さるのは、彼らの絶望の深さの表れなのかも。格差の拡大で若年層は未来への不安でいっぱい。国家は分断され、あんまりいいこともない。だからこそ太宰の世界への共感が拡がっているのでは」

 版元の広報は、こんなふうに表現した。

「非常に憂鬱な時代に、憂鬱な若者にアピールする、憂鬱な本です」

週刊新潮 2022年2月3日号掲載

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