共通テスト不正で聞こえてきた捜査員のぼやき 京大カンニング事件で石原慎太郎は「やられた方がバカ」と言っていた
11年前、京大に対して沸き起こった批判
今回の一件で思い起こされるのは、2011年に京都大学など4大学の入試問題が「Yahoo!知恵袋」に投稿された事件である。学生新聞「京都大学新聞社」が投稿に気づき、Twitterでスクープ。その後、京都大学から被害届を提出された京都府警が捜査に入り、宮城県仙台市在住の19歳の予備校生が偽計業務妨害容疑で逮捕された。
予備校生が使ったのはスマホではなく携帯電話。股の間に挟み込み、右手で筆記具を動かしながら左手を使い高速で文字を打ち込むという、当時の先端技術が駆使されたカンニングだった。京大の数学では、34分間に6回も投稿。結局、予備校生は京都家裁に送致されたのち、不処分となった。
まさに今回のような騒ぎだったのだが、思い返せば、世間の反応は大分違った。あの時は「たかがカンニングで、未来のある若者を警察に差し出すのか」と被害届を提出した京大が大きな批判に晒されたのだ。大学によって対応も別れ、早稲田大学と立教大学も警視庁に被害届を提出したが、早稲田はのちに取り下げ、同志社大学は「学内で対応する」として提出しなかった。
京大内部でも批判が起き、当時、朝日新聞の取材に、名誉教授が「受験生の逮捕を認めることは、若者の人権をないがしろにするもので、教育機関が取るべき対応ではない。教育者としての見識より経営を優先させた表れと言える。今からでも被害届を取り下げるべきだ」とコメントしている。
石原慎太郎が言い放った言葉
脳科学者の茂木健一郎氏も、Twitterで京大の対応を「京都大学、お前は死んだ!」「逮捕だとさ。ナチス。世界の笑い者」などと痛烈に批判。予備校生に対し「彼は日本のウィキリークスだ」と擁護したくらいだった。
2月1日に亡くなった石原慎太郎元都知事は、当時、都庁での定例会見でこの件について記者に問われ、次のように答えていた。
「世の中はものごとが進んだ。携帯の持ち込みを制限するなどの措置を講じなかった大学当事者の方が時代に遅れている。(中略)日本で初めて入学試験で携帯を使い、カンニングをやったというのは見上げたもんなんじゃない。ある意味、学校のほうがバカ。そういう時代になった」
11年の時を経て、再び起きたカンニング大騒動。泉下で石原氏はどう思っているのだろうか。
[2/2ページ]