M&A仲介大手が業界団体を設立…「社会のためにやっている」は綺麗事と言われるワケ

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20兆円を超える市場規模

 降りかかる火の粉を払いながらも業界が仲介ビジネスに躊躇しないのは、事業承継型M&Aの市場規模が20兆円を超えると言われているからだ。

 日本M&Aセンターの業績は2010年3月期に売上高36億円、経常利益13億円だったところ、10年後の21年3月期には売上高361億円、経常利益165億へ急成長している。M&A成約件数も17年3月期に年間524件だったのが21年3月期には914件、今期22年3月期は1000件に迫る勢いで「成約件数がギネス世界記録に初認定されました」と同社幹部は胸を張る。

 業界では昨年、FAに徹してきたM&Aコンサル大手のGCA(渡辺章博社長)が米独立系投資銀行のフーリハン・ローキーに買収されたことが一大ニュースになった。グローバルプレイヤーだったGCAの被買収(上場廃止)は「世界のM&Aでは当たり前のFAが日本では根付かなかった。日本のM&A市場はガラパゴス化しつつある」(FAコンサルタント)ことを印象づけた。事実、日本M&Aセンターの時価総額が1兆円前後に成長しているのに対し、GCAの時価総額は上場廃止前の昨夏時点で400億円足らず。日本では市場の評価も仲介に軍配が上がっていたのだ。

FA専業のコンサルタントは失望

 GCAの被買収には裏話もある。関係者の一人が明かす。

「実は、ある段階までは日本M&Aセンターが買収する予定で話が進んでいたのです。批判に晒されてきた仲介大手3社にとって、自他ともに認めるクリーンなイメージを持ち、グローバルスタンダードなFAをやるGCAは垂涎の的でした。買収が実現すれば一気に仲介のイメージアップが図れる。そこで業界トップの日本M&Aセンターが前のめりに動いたのですが、仲介会社に買われることにGCA内部から反発の声があがったのです。買収価格面でも折り合いがつかなかったようで、結局、話は流れてしまいました」

 デイリー新潮はGCAに取材を試みたが、期日までの回答はなかった。しかし、FAしか行わないことを社長みずから公言していたGCAが日本M&Aセンターに身売りしようとしていた話はすでに業界に知れ渡り、FA専業のコンサルタントに失望をもたらしている。

 仲介業界は今後、協会の拡大を通じてM&A仲介の認知度向上とイメージアップを図っていくという。中小企業庁の協力も取り付けているため、それなりに成功を治めるだろう。ただ、これが日本のスタンダードになるのは、やはり違和感がある。

デイリー新潮編集部

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