「デジタルの牢獄」と化したウイグルの恐ろしい実態…収容所送りにされた少女「メイセム」の証言

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「性悪女!」「売春婦!」

「なかに入ってください」と看守が言った。うしろで扉が閉まると、自分が長いセメントの廊下の端にひとり立っていることにメイセムは気がついた。およそ10メートルおきに設置されたカメラのレンズが彼女のほうに向けられていた。

 メイセムは中庭へと連れていかれ、待つように言われた。頭は真っ白で、ただただ戸惑っていた。10人の看守がまわりを取り囲むように立った。

「ここでは誰が偉いのか、この女に教えてやろう」と看守のひとりが叫んだ。

 ふたりの男がメイセムを地面に押し倒し、靴を脱がせ、脚をもって体を外へと引きずりだし、隣の小さな中庭に引っぱっていった。そこには、不機嫌そうな表情をしたべつの数人の男女がいたが、彼らも意に反して連れてこられたのは明らかだった。

「この尻軽女が」と看守たちは叫んだ。

「性悪女!」「売春婦!」

 メイセムはなんとか逃れようと手足をバタバタさせた。数分後、看守たちは笑いながらうしろに下がった。

 すでに正午ごろになり、8月の灼熱の太陽が空高くに昇っていた。看守たちはメイセムの体をもち上げ、手錠と拘束具がついた鉄の椅子に引っぱっていき、腕と足に手錠をかけた。

「とんでもなく不快な気持ちでした」と彼女は私に言った。

「それはタイガー・チェアでした。そう、誰もが噂で耳にしたことのある拷問椅子です。あの人たちは、そうやって見せしめにする。体を捻じ曲げて苦しめるんです」

炎天下で8時間放置

 ほかの囚人たちもその様子を見ていた。

「彼らはまるで患者でした。自動車事故で負った頭の外傷から回復し、人格を失った患者みたいに」とメイセムは言った。

「考えることも、質問することも、感情をあらわにすることも、話すことさえできないようでした。みんな虚ろな眼でこちらを見るだけ。しばらくすると彼らは、建物のなかへと追い立てられていきました」

 看守たちは、炎天下の中庭にメイセムを8時間にわたって放置した。彼女の肌は真っ赤になり、熱傷を起こしてひりひり痛んだ。

 熱傷を起こした皮膚の痛みが、彼女を現実へと引き戻した。それから数時間、自宅での暮らしについての朦朧とした夢と無意識のあいだを行ったり来たりした。

 看守はメイセムにたいし、両手を上げた姿勢をもとに戻すように言った。それから、彼女は監房に連れていかれた。一般的な住宅の居間と同じ30平方メートルほどの室内には、20人ほどの女性がおり、2台のカメラが設置されていた。

 メイセムの眼には、女性たちが放心状態にあるように見えた。座っている人も立っている人もみな、ぼんやりと遠くを見つめていた。

「わたしは誰にも話しかけなかったし、彼女たちもわたしには話しかけてきませんでした。誰もお互いを信用していなかった」

 メイセムの直感は正しかった。

 その夜、メイセムは一睡もできなかった。彼女の2段ベッドの横にはバケツが置かれており、女性たちが夜どおし代わる代わるやってきて排尿・排便した。室内にはひどい汚臭が充満していた。

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