藤浪がわらをも掴む気持ちで菅野に弟子入りで、ちょっと考えさせられること【柴田勲のセブンアイズ】

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自主トレ便りが届く球春到来

 今コラムをご愛読の皆さん、遅ればせながら、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 プロ野球界は早くも本格始動し、各方面から自主トレ便りが届いている。球春到来だ。

 巨人のエース・菅野智之(32)は昨年12月20日に沖縄・宮古島入りして年末年始を無休で汗を流しているという。昨年は度重なるケガもあって19登板で6勝7敗、防御率3.19という不本意な成績だった。巻き返しを固く誓っているのだろう。

 その菅野の自主トレには中川皓太(27)らも参加しているが、年明けには阪神・藤浪晋太郎(27)投手が合流した。以前から出ていた話だが、これには正直ビックリした。

 菅野と藤浪はともに2012年のドラフト1位だが、いまは言ってみれば現エースと元エースというところだろう。なんでも昨年の12月に藤浪が菅野に直接電話をして、「自主トレに参加させてください」とお願いし、菅野も快く受け入れたのだとか。

 藤浪はプロ入り直後3年間、2ケタ勝利を挙げたもののここ数年間は低迷している。とにかくコントロールが悪い、ストライクが入らない、四死球で自滅する。高校時代はコントロールが良かった投手なのに。投球フォームに欠陥があるのか、それとも精神的なものなのか、藤浪も相当な危機感を持ったのだと思う。阪神も復活の兆しが見えず困っていると聞く。

阪神と藤浪にメリットはあっても

 確かに現在、通信手段が発達して選手間で連絡を取りやすくなっている。私の現役時代は他球団の選手の電話番号など知る由もなかった。近頃は球団のワクを飛び越えて、一緒に自主トレを行うことは珍しくなくなった。選手間同士の垣根は低くなった。それでも藤浪は覚悟を決めて、わらをも掴む気持ちで菅野に連絡したのだろう。

 藤浪は菅野に主に投球フォームのことを積極的に質問しているという。狙いは技術的なところではないか。スタミナはある。先輩が後輩に技術・心構えを伝授する。これは悪いことではない。プロ野球界全体の発展にもつながる。我々名球会も野球教室を開いて子供たちを指導する。しっかりとした技術を身に付けてほしいと願えばこそだ。

 だが、藤浪がパ・リーグの投手ならともかく、巨人と阪神は同一リーグでライバル関係にある。菅野にいわば、「弟子入り」した藤浪のケースは稀だろうが、合同自主トレをきっかけに復活したら、巨人としてはどうなのかな。

 もともと、球速はあるし、球に力もある。制球難を克服すれば、15勝~20勝できる可能性がある。潜在能力は非常に高い。

 例えば公式戦、V争いの真っ最中に菅野と藤浪が投げ合って、藤浪が勝つとしよう。こうなると、やはりちょっと考えさせられる。外野からもいろんな声が出るに違いない。ライバルだけにどうしても引っかかるのだ。要するに阪神と藤浪にメリットはあっても、巨人にはない。

 こんな考えになってしまうのは私だけではないと思うが。

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