重症化率、経口薬の確保数、病床の余裕は? オミクロン株の疑問を専門家が徹底解説

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インフルエンザに近い症状

 Q.無症状、軽症、中等症、重症の割合は?

「オミクロン株の入院および死亡リスクが、少なくともデルタ株の3分の1以下なのはたしかで、これは朗報といえます」

 と水谷教授は言うが、そのメカニズムについては、

「デルタ株はウイルスが肺で増殖しやすかったのに対し、オミクロン株は鼻やのどなどの上気道で増殖しやすい、という特性と関係していると考えられます。しかし、明確な理由はまだ解明の途上です」

 感染が爆発している沖縄では、どんな症状なのか。田里医師が説明する。

「デルタ株にくらべ症状自体は軽く、インフルエンザに近い症状と言っていいと思います。のどの痛みやイガイガ、鼻水や鼻づまりなどが主な症状です。デルタ株では自覚症状がなくても、レントゲンやCTで肺炎が見つかることもありましたが、肺炎の患者さんはほとんどいません。味覚や嗅覚の異変も、身体の節々の痛みもない。熱は39度近く出る人もいますが、2~3日で収まるパターンが多い。デルタ株は症状が1週間以上長引くことがありましたが、感染から2~3日で症状が出て、2~3日でスッと引きます。症状が出てから4~5日経って来院されると、もうピークを越えていることが多いのです」

 沖縄では、感染者のうち無症状者と軽症者が92%を超える。ただし、無症状者も比較的少ないが、重症者はほとんどおらず、250名が入院して、人工呼吸器の装着者はゼロだという。

「入院患者さんも、以前は肺炎の症状がある中等症以上で、その一部は酸素を吸っている状況でしたが、いまは重症化を予防する目的で、重症化リスクの高い患者さんを選び、抗体療法を行う目的で入院していただいています」(同)

まん防よりミクロ対策

 Q.後遺症の心配はないのか?

 矢野医師が説明する。

「重症化リスクが低いので、後遺症も、過度に心配する必要はないと思います。症状が軽いということは、それだけ後遺症も少なく、あっても軽度で治まると考えたほうが自然です」

 Q.潜伏期間が短いというが、すると流行期間も短くなるか?

 沖縄の田里医師は、潜伏期間が「2~3日」と述べたが、すると、流行期間も短くはならないのか。

「国立感染症研究所などのデータでは、オミクロン株の潜伏期間は3.5日。デルタ株の4~5日にくらべ、4種類ある風邪のコロナウイルスの約3日に近づいています。潜伏期間が短ければ、ウイルスが体内に留まる期間も短くなり、流行期間も短期になる可能性が高い。ピークアウトするのは、デルタ株より早いと考えられます」(矢野医師)

 事実、南アフリカは、デルタ株では感染の波が収まるのに4カ月かかったのに、オミクロン株は1.5カ月で波が引いている。流行期間が短いとわかっていれば、気の引き締めようもあるというものだろう。

 一方、岸田総理は冒頭で記したように、3県にいち早くまん延防止等重点措置の適用を決めた。また、日本医師会の中川俊男会長は、各都道府県は「まん延防止重点措置や緊急事態宣言の要請を準備しておくべきだ」という認識を示した。

 だが、ウイルスの性質が変化したのに、相変わらずの人流制限に意味はあるのか。医師でもある東京大学大学院法学政治学研究科の米村滋人教授が言う。

「国はこれまでも、経済的損失が大きく効果は薄い対策に終始していて、適切だったとは言いがたい。飲食店への一辺倒の休業要請がいい例で、これまでの対策を反省して対応を変えるべきです。マスクや換気などミクロレベルの対策が十分でないまま、いたずらに経済活動を止めても、損失のわりに効果が薄すぎます」

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