重症化率、経口薬の確保数、病床の余裕は? オミクロン株の疑問を専門家が徹底解説

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

家庭感染の防ぎ方

 Q.家庭内感染はどう防げばいいか?

 松井准教授が言う。

「電車内よりずっと密な家庭内では、家族のだれかがオミクロン株を持ち込んだら、すぐに全員が感染してしまうと思います。家庭内にリスクの高い高齢者や基礎疾患がある方、もしくは受験を控えたお子さんがいる場合は、食事の場所や生活空間を分け、こまめに換気をするなどの対策をしたほうがいいと思います。寒くても1時間に1、2回は窓を開けましょう」

 水谷教授も強調する。

「ただでさえ感染力が強いので、家庭内感染はこれから増えていくと考えられます。飲食店やイベントなどの3密回避は、国が主導して行えますが、家庭内の対策には政府も容易に介入できません。しかし、感染対策で一番難しいのは、実は家庭内感染をいかに防ぐか、です。特に受験を控えたお子さんがいる家庭では、これから1カ月程度は、家族団らんの場でもマスク着用を心がけることなども、考慮していいと思います」

 Q.高齢者や持病もちも重症化しにくいのか?

「重症化のリスクはデルタ株にくらべ、イギリスでは3分の1だといわれていましたが、日本の様子を見ていると、もっと低いようにも見えます」(松井准教授)

 とはいえ、高齢者が安心していいということではない。後藤医師が言う。

「現状、感染しているのは、仕事を含めて社会活動が活発な若者が中心ですが、かかったときの危険性は、高齢者のほうが高いでしょう。持病があり、合併症を引き起こす危険性があるなど、余力がありませんから」

 日本の65歳以上の高齢者は、ワクチン2回接種率が92.1%に達し、それで重症化が抑えられる可能性が指摘されている。しかし、水谷教授によれば、こんな盲点もあるようだ。

「高齢者は誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高く、注意が必要です。オミクロン株に“上気道でウイルスが増殖しやすい”という特性があるということは、結果的に、口腔内でのウイルス増殖を招きます。誤嚥性肺炎とは、口の中で増殖したウイルスなどが肺に達して起きる肺炎。高齢者の死亡率が高い誤嚥性肺炎とコロナ感染が併発すれば、非常に危険で、細心の予防対策を続けてほしいです」

病床の状況は

 Q.熱が出たら病院で診てもらえるのか?

「感染者が増えてきたいま、指定病院でなくても発熱患者は別の窓口を設け、受けつけていると思います。ただ、冬場は診療体制が整いにくく、心筋梗塞や肺炎も冬に多くなります」

 と、後藤医師は言う。だから寺嶋教授も、

「いきなり病院を訪れるのは、避けたほうがいい」

 と注意喚起し、続ける。

「風邪のような症状があったら、発熱外来やコロナ診療を行っている近くの病院を探し、電話してみましょう。自治体の発熱相談センターに電話し、紹介してもらう手もあります」

 Q.そもそも病床は足りているのか?

 角田副会長が話す。

「国は当初、オミクロン株の感染力が強いのを理由に、感染者は全員入院という措置をとるように求めていましたが、感染者が増えるとそれは難しい。第5波までと同様、感染者は家族への感染を避けるためにも、ホテル等の療養施設に入っていただきたく、現状、都の療養施設は感染者を受け入れる余裕が十分にあります。療養施設なら、私どもも患者さんを効率的に診察できます。在宅診療に関しても、各自治体の先生方が受け入れ態勢について、ネットワークをしっかりと構築できていると思います」

 では、入院が必要な状態になったときはどうか。

「東京都の確保病床数は6919床で、入退院時に消毒が必要なので、稼働の上限は全体の8割程度ですが、5600床程度は使えます。10日時点の入院患者は767人なので、まだ余裕があります。第5波では、保健所による入院調整の業務が回らなくなりましたが、その後、都庁の調整本部の機能が、かなり強化されています。その点でも、第5波のときより有効に病床を利用できるようになっているはずです」

 一方、矢野医師は、以下のような懸念を示す。

「医療従事者の感染が増えていますが、病院内でうつったケースは稀で、大半は同居家族が感染し濃厚接触者になったか、家庭内で感染したと考えられる。現状、医療体制は整っていますが、医療従事者の感染がこれ以上増えれば、医師や看護師の不足から医療機関が機能不全に陥り、医療逼迫を招く事態も否定できません」

次ページ:沖縄でなにが起きているか

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[3/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。