羽生結弦 高校まで指導したコーチが語った「4回転半」の原点と「引退説」

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〈辞めちゃダメだ〉

 運動部デスクによれば、

「昨年3月の世界選手権後、記者に“4回転半が決まったらスケートをやめるのか”と問われて、“満足したら考えるかもしれないし、わからない”と答えています。足首の負傷は慢性化しており、本人は満身創痍です。もし、五輪で4回転半を成功すれば引退するのでは、とも見る向きもあるのです」

 4年前に刊行した自著『夢を生きる』(中央公論新社)の中でも、小学校から高校まで指導を受けたコーチの都築章一郎氏(84)に「初めて4回転半を跳ぶ男になれ」と言われ続けたというエピソードを披露している。本から引用すると、

<思い返すと、都築(章一郎)先生に習っていた小学生の頃から、「4回転アクセルまで跳ばなきゃならなくなるぞ」と言われていました。5回転もやれと言われていました>

<五輪で2連覇、19歳と23歳で優勝。その後は、プロになって何年間滑って、何歳で結婚して――。ずっと前から全部計画していたんです。だけど、「ちょっと待てよ、4回転アクセルを跳びたくないのか?」と思ってしまったんです。都築先生にも「初めて4回転アクセルを跳ぶ男になるんだ」「アクセルは王者のジャンプだ」と言われ続けてきた。だから、アクセルに恩返ししなきゃいけない、跳ぶまでは辞めちゃダメだと思っています>

 かように4回転半を跳ぶまでは一線を退くことができない、という決意表明を綴っているのだ。

「彼が小学校2年生の時に初めて出会い、その頃から“五輪に出ようね”という話はしていました」

 とは、その都築氏である。

「同時に結弦が世界に羽ばたくときは4回転アクセルを跳ぶような時代になるだろうと思い、4回転アクセルや5回転を跳べるようにしようね、という話をした覚えもあります。3年ほど前に会った時も“4回転アクセルを跳べる初めての人になりなさい”と言うと、結弦は“3年くらい待ってください”と言っていました。彼はこれまでも強い気持ちを持って有言実行してきました。北京五輪で完成形を見せる可能性は十分あると思います」

 としてこう続ける。

「2年前くらいに彼が4回転アクセルを練習している動画を見たときに、これはかなり良い状況だなと思いました。近い将来完成した4回転アクセルを見られるのだと期待していたんです。昨年、NHK杯の前のけががなければ、今回の全日本で完成形を見られた可能性もあったと思います。しかし実際には本番でも練習でも回転不足でした。本番で彼が回転不足の4回転アクセルとなったのは、やはり“安全”という考えが頭の中にあったのだと思います。回転不足でも形として完成させたものを残しておきたかったのでしょう」

 では、ファンも周囲も気に揉む“引退説”について訊くと、

「今回の全日本選手権は現地で公開練習を見ていました。回転不足でありながら、着氷している姿を見て、出会った時から彼は挑戦する子供だったこと、今までダブル、トリプル、クワッドと挑戦しては成功する姿を思い出しました。これは私の想像ですが、今の取り組み方を見ていると4回転アクセルを完成させることを、彼なりに自分の集大成として考えているんじゃないかなと思います。彼は4回転アクセルを跳ぶことを一つの使命のよう感じている部分があります。ですから、それが達成された際は終止符として引退することもあるかもしれません。一方で、彼は小さい頃から夢を追うスケーターでした。新たな目標を見つけ、現役を続ける可能性もある。それはやはり本人にしかわからないでしょう。彼なりにいろいろと考えていると思います」(同)

 誰もが期待する94年ぶりの五輪3連覇へ期待は高まっているが、北京五輪後、選手として“着氷”する先はいつ、どこになるのだろうか。

週刊新潮 2022年1月13日号掲載

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