箱根駅伝「男だろ!」で賛否両論も劇的V…“名物監督”3人の驚くべき言葉の力

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漫画家の高橋しん氏も箱根OB

 山梨学院大・上田監督も、史上初の留学生選手起用や当時はなじみの薄かったスパイラルテープ(身体のバランスを改善し、痛みを軽減するテープ)を用い、選手の集中力を高めるなど、新たな試みの数々で駅伝界を大きく変えた一人だ。

 ともすれば、山梨学院大は留学生の存在がクローズアップされがちだが、「ウチは寄せ鍋チーム。肉(2区)だけではダメなんです。入部してきた選手を強くして卒業させるのが僕の役目」の言葉どおり、全員で力を合わせ、全体のレベルアップを図ることに力を注いでいた。

 1992年の第68回大会で創部初の総合優勝を達成したときの6区区間賞・広瀬諭史は、高校時代にほとんど実績がなかったが、入学以来1日も練習を休まず、努力を続けた“雑草軍団”の象徴的存在だった。

 ちなみに漫画家の高橋しん氏も、同大の初出場時にアンカーを務めた箱根OBの一人。代表作「いいひと。」を「ビッグコミックスピリッツ」連載時に、筆者は上田監督を取材したことがあるが、「今週(号)はいい話でしたね」とかつての教え子を褒めていたことを覚えている。

 これは、実業団で活躍した兄弟選手を入学させ、箱根予選会に出場した新興大学のストーリーで、この両エースがペースメーカーになって大集団から抜け出した直後、「ここから先はみんなで頑張って」と奮起を促して途中棄権する内容だった。その後、チームはエース抜きで予選を突破した。

 そんな“寄せ鍋チーム”らしい全員が心をひとつにして襷をつなぐ走りを今年も期待したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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