箱根駅伝「ごぼう抜き」伝説 最多は前人未到“20人抜き”の日大「ダニエル」

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4年間で計50人

 後方からスタートした選手が、前を行く選手を次々に抜き去っていく「ごぼう抜き」の快走も、箱根駅伝の見どころのひとつである。2021年までの大会で、ファンの記憶に残る“ごぼう抜き”を演じた名ランナーを振り返ってみると、11人以上のごぼう抜きを達成した選手は、昨年まで延べ22人いるが、うち19人までがエース区間の2区で達成されている。【久保田龍雄/ライター】

 1区で大幅に出遅れても、前の走者との差が少ない2区では、エースが劣勢を一気に挽回することが十分可能だからだ。歴代最多は、第85回大会(2009年)で日大のギタウ・ダニエル(当時3年)が記録した20人である。

 ブービーの22位で襷を受け取ったダニエルは「1区で遅れたけど、自分がひとつでも順位を上げたかった」の使命感に燃え、次々にライバルチームの走者の背中をとらえて抜き去っていく。5キロ過ぎに左ふくらはぎの違和感を覚えてもペースは落ちることなく、18.9キロ付近で2位・中央学院大の木原真佐人も抜き、ついに前人未到の20人抜きを達成した。

 記念大会で参加校が多かったこと、1区で大きく出遅れたことが追い風になった形だが、条件はどうあれ、学生トップレベルの実力ランナーでなければ、達成できない快挙に変わりはない。前年も15人抜きで第79回大会(03年)の順天堂大・中川拓郎と並ぶ史上最多タイを記録したダニエルは、「4年間で計50人」を抜き、これまた歴代トップである。

「仲間への感謝の気持ち」

 日本人選手で最も多くごぼう抜きを演じたのが、第87回大会(11年)の東海大・村沢明伸(当時2年)の17人(歴代2位)だ。最下位の20位で襷を受け取った村沢は「とにかく順位を上げるしかない」と力強いストライドで飛ばしに飛ばし、最初の6キロまでに16人を抜き去った。

 この時点で前出の中川とダニエルの15人を上回ったが、なおも13キロ地点で1万メートル27分台のジョン・マイナ(拓大)との競り合いも制し、3位に浮上した。

 前年秋に右足首をねん挫し、10月の箱根予選会に出場できなかった村沢は「悔しいというより、申し訳ない気持ちだった」という。「出場権を獲ってくれた仲間への感謝の気持ち」が、日本人では三代直樹(順天堂大)以来12年ぶりの1時間6分台、17人抜きという最高の結果につながった。

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