政府はコロナ対策で病床数を大幅に増加させたと言うものの…医療現場から聞こえてくる冷ややかな声

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脱「負担の平等化」の提唱

 法律上もさることながら、コロナ病床が増えない背景には日本の医療が抱える構造的な問題がある。日本では「負担の平等化」を図る観点からなるべく多くの病院に対して少しずつ病床を空けるよう要請してきたが、中小規模の民間病院が大半を占める日本で、コロナ病床を上積みすることは困難だと思う。

 コロナ禍の医療体制の問題に詳しい鈴木亘・学習院大学教授は「非常時に大病院にコロナ患者を集中的に受け入れさせ、大病院のコロナ以外の患者を中小病院に転院させる仕組みを構築する」ことを提案している。病院のコロナ患者が増えると、はじめのうちは経営が苦しくなるが、一定の患者数を超えると逆に収益が増して経営が楽になることが、東京都内の病院データの分析から明らかになっている。このことは、コロナ患者受け入れは必ずしも病院経営にとってマイナスばかりではないことを意味する。幸いにも大病院は公立・公的病院や大学病院が多いことから、国や都道府県がやる気さえあれば、現在の法的枠組みの範囲内でも実施することは可能だろう。

 このような課題に手を付けずに、現場から報告された病床の上積み数を鵜呑みにしていると第5波の悲劇を繰り返すことになるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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