政府はコロナ対策で病床数を大幅に増加させたと言うものの…医療現場から聞こえてくる冷ややかな声

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医療現場からの冷ややかな声

 米国の新型コロナ感染者のうち、オミクロン型の割合は11日の12.6%から18日には73.2%となったという。1週間で5.8倍に膨れ上がったことになる計算だ。この感染拡大の速さを前提に試算すると、東京の1日当たりの感染者数は1月中旬に6000人を超え、第5波のピークの数字を上回るという。オミクロン型の重症化リスクが低ければ入院患者数のピークは第5波を上回らないかもしれないが、油断は禁物だ。

 政府は「コロナ病床数を大幅に増加させた」としているが、医療現場からは「病床を増やしてもスタッフ不足の状況は変わらない」との冷ややかな声が出ている。

 コロナ病床における看護師不足が指摘されているが、日本全体で看護師が不足しているわけではない。2018年時点の日本の看護師数は人口1000人当たり11.8人と、OECD加盟国平均の9.0人を上回っている。一部のコロナ患者受け入れる病院の看護師たちが必死に頑張っている状況なのだが、後述するように、政府が病院に対して強制的な措置を強いることができない日本では「言うは易し、行うは難し」だ。

 民間病院が多いこともコロナ対応の障害になったと言われている。政府のコントロールが届きやすいとされる公立・公的病院の比率がわずか2割であるのは事実だが、民間病院が多くても、米国のように非常時に大統領や知事が緊急命令を発出して、病床確保を民間病院に命じられる制度があれば、公立・公的病院の割合が少なくても対応できる。韓国の医療制度は日本とよく似ているが、韓国政府は感染拡大の際に重症病床を確保するための行政命令を出す権限を有している。

 これに対し、日本では非常時でも民間病院に対して行政命令を出すことができない。コロナ禍が深刻化した折に「協力要請だけでよいのか」との議論が生じたものの、医療界の猛反発に遭い、今年2月の感染症法改正でも行政命令にまで踏み込むことできなかった。来年の通常国会に提出される感染症法改正案でもこの点について言及していない。

 これまでは法律上の行政命令が使えないため、コロナ病床確保に対する各種補助金を用いて民間病院にコロナ患者を引き受けさせようとしてきた。だが効果がほとんどあがらないばかりか、空床に対する病床確保料をもらっていながら、コロナ患者の受け入れを拒否するケースも相次いだ。国民の税金がこれ以上無駄遣いされないためにも、厚生労働省は補助金に関する実態調査を早急に実施すべきだ。

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