中国・西安で「流行性出血熱」が感染拡大中か 人民解放軍の病院が閉鎖されたとの報道も

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情報開示か統制か

 ちなみに、西安市と北京市の距離は直線で約900キロ。東京都からだと、愛媛県松山市が851キロ、福岡県福岡市が1133キロとなる。広大な国土を持つ中国からすると、2都市は“指呼(しこ)の距離”と言っても大げさではない。

「西安市内は一体どんな状況になっているのか。ただならぬ状況になっている可能性も否定できません。少しでも正確に推測するためには、中国共産党の情報開示に対する姿勢を考える必要があります。どこまで公開し、どこまで統制するつもりなのか。加えて、中国人が健康問題について極めて高い関心を持っていることも考慮しなければならないでしょう」(同・田代氏)

 中国人は中国共産党の命令なら唯々諾々と従う──こんなイメージを持っている日本人も多いだろう。だが田代氏によると、「テーマによっては全く異なる」という。

「健康に直結する問題、例えば工場排水規制を求めるデモなどでは、中国人も激しく党を批判します。『党は自分たちの安全や健康を守ってくれない』と中国人が判断すると、党に対して猛烈な抗議をするでしょう。下手をすると、中国共産党の統治体制すら揺るぎかねません。ですから『出血熱の感染拡大が続いている』という報道は、事実だと考えていいでしょう。ただし、細部については情報統制が行われます。感染者数や入院者数や死者数、感染拡大の理由や背景といった点については、今の時点では公開されていません」

動画の変化

 メディア側も党や政府の規制の間隙を突き、できるだけ正確な情報を報道しようとする。田代氏が注目したのは、ウェイボーに投稿された現地メディアの「動画」だ。

「文章は検閲が容易です。しかし、ニュース動画には思わぬものが映っていることがあります。情報統制下では、動画のほうが貴重な視点を提供してくれることが多いのです。例えば、医師や看護師がボランティアとして西安に向かうという、現地の放送メディアが制作した映像がウェイボーにアップロードされています。18日までは医師も看護師も私服姿で、マスクは全員着用していても、旅行に行くかのようなリラックスした表情でバスに乗り込んでいました」(同・田代氏)

 ところが19日に公開された動画では、ボランティアに向かう医療関係者の全員が白い防護服に全身を包んでバスに乗り込んでいた。おまけに、警察官が敬礼をしながら医療関係者を見送る姿もアップで紹介されたのだ。

「僅か1日で、それこそ『出征』とか『学徒出陣』という言葉が連想されるほど、緊張感のある動画に変わってしまったのです。こうなるとやはり、現地の感染状況はかなり深刻なレベルに達しているのではないでしょうか。少なくともそう推測されても仕方がない報道内容だとは言えるでしょう」(同・田代氏)

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