看護師業界に訪れた「コロナバブル」の闇 沖縄で「約束と違った」と苦情が噴出

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全国知事会、自衛隊、人材派遣会社、NGOなどから500人以上

 沖縄県ではこのワクチン接種会場の他にも、入院待機ステーションや宿泊療養施設、クラスター発生施設で働く看護師を大々的に募集していた。

 県の新型コロナウイルス感染症対策本部の本部長である玉城デニー知事は2021年5月、全国知事会に対して50人程度の看護師派遣を要請したほか、8月には自衛隊にも災害派遣の要請。また県の担当者によれば、この他にも複数の人材派遣会社や医療NGO団体など数々のルートを通じて、第4波と第5波の間、看護師を合計500~600人ほど緊急対応要員として採用したという。

 採用ルートと集めた人数が多すぎたのか、意思疎通がうまく取れず、不満を募らせた看護師も出ている。

「応募したときは時給5000円以上を提示されていたのに、実際に働きはじめる前々日になってその半分くらいと電話口で訂正されました。もう前の仕事は辞めていて、県の仕事を始める準備を終えた後だったので、今さらどうにもならない状況でした」

看護師に採用条件が正確に伝わらず

 給料の支払いでも行き違いがあった。県の募集条件には、「応援形態:雇用契約でない謝金払いの応援業務」「謝金:活動終了後に精算払いします」と記されている。この時の募集は雇用契約に基づく仕事ではなくテンポラリーな応援業務であり、支払われる金銭は給料ではなく、あくまでも活動がすべて終わってから支払われる「謝金」というわけだ。

 だが、一部の採用ルートではその意味するところが明確には伝わっておらず、かつ多様な契約形態の看護師が混在していたことから、混乱が生じた。

 応援業務にあたった看護師からは、このような声が上がっている。

「いざ現場へ行ったら、契約書のようなものを提示されることもなく、給料の支払口座を聞かれるわけでもなく、タダ働きさせられている感覚になった」

「入職前に説明されるべきことを、応援期間終了の数日前になって説明された」

「人によって給料が振り込まれていたり、振り込まれていなかったり。時給もばらばらだった」

 県の担当者は、「第4波、第5波では、色々な団体・業者さんに協力していただいて看護師を集めました。『謝金』対応などの採用条件については、協力していただいた団体・業者さんが看護師に伝えてくれています。しかし、もしうまく伝わってないようでしたら、その反省をもとに、再び緊急事態になったときには同じことが起きないようにしたいです」と語る。

 地理的に本州から離れている沖縄県は、医療体制がひっ迫したとしても隣接県から助けてもらうのは難しい中、これまで何とかコロナ禍を乗り切ってきた。しかも緊急事態においては、想定しないトラブルが生じるのは当然かもしれない。

 だが、玉城知事が県政の柱として掲げるのは、「誰一人取り残さない、沖縄らしい優しい社会」であるにも関わらず、一部の看護師を取り残してしまった。今後再び訪れるかもしれない緊急対応では、どの看護師も取り残さないような体制を築くべきだろう。

デイリー新潮編集部

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