落合博満、秋山幸二、糸井嘉男…世紀の“大型トレード”はこうして成立した!

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2年連続三冠王の放出

 2021年シーズンも終わり、トレード戦線が本番を迎えたが、時にはチームのイメージを一新するため、主力同士の大型複数トレードが実現することもある。野球ファンを驚かせた、球史に残る「大型トレード」を振り返ってみよう。

 1人の選手に交換相手が4人という“前代未聞のトレード”が成立したのが、1986年オフ。ロッテ・落合博満と中日・牛島和彦、上川誠二、平沼定晴、桑田茂の1対4トレードである。2年連続三冠王の放出という普通ならあり得ないトレード劇は、シーズン後、稲尾和久監督が実質解任されたことから始まった。

 稲尾監督を信頼する落合は「人事のやり方がおかしい」と球団を批判し、「稲尾さんがいないのなら、自分がロッテにいる理由はない」とトレード志願。マスコミは連日のように“落合騒動”を大きく取り上げた。

 当初、球団側は放出を否定したが、水面下では巨人と交渉していた。通算3度目の三冠王達成により、年俸9700万円の落合が日本人初の1億円プレーヤーになることは確実だったが、この間、チームはBクラスに低迷することが多く、本拠地・川崎球場も閑古鳥が鳴いていた。経営が苦しいのに、高額年俸を要求し、球団批判もする主砲に手を焼いた球団は、落合を人気球団の複数の選手と交換しようと考えた。

エース小松以外なら「誰でもOK」

 斎藤雅樹、水野雄仁ら若手投手2人プラス野手1人が基本線だったといわれ、篠塚利夫、岡崎郁らの名前も取り沙汰されたが、巨人側はなかなか結論を出せない。そんな矢先、中日の新監督に就任した星野仙一が落合獲り参戦を宣言。交換要員もエース・小松辰雄以外なら「誰でもOK」と明言し、落合の巨人入り阻止に動いた。

 この出血覚悟の熱意がロッテ側を動かし、12月23日、抑えのエース・牛島、正二塁手・上川、中継ぎの桑田、平沼の4人を交換相手に“世紀のトレード”が成立する。

 1人に対し4人という規格外の評価に、落合は「そういう選手なのかなあと、つくづく自分で感心している」と“オレ流”の感想を口にし、「ロッテで優勝できなかったので、そのできなかったことを中日でやりたい」と誓った。

 7年在籍した中日で、落合は88年のリーグ優勝に貢献し、史上初の両リーグ本塁打と打点王を達成したが、中日監督時代にも2007年の日本一をはじめ、リーグ優勝4度と黄金期を築いた。1対4のトレードで得をしたのは、明らかに中日のほうだった。

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