「Jリーグ本拠地撤廃」報道の衝撃 背景に海外市場に目を付けるIT経営者

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 10月17日(日)朝に報じられた「Jリーグ、ホームタウン制撤廃へ」というニュースには衝撃を受けた読者も多かっただろう。「今月中にも正式決定の見通し」と、スポーツニッポンは次のように報じた。

「Jリーグが来季から事実上のホームタウン制度撤廃を検討していることが16日、明らかになった。既に議論を重ねており、早ければ今月の理事会で正式決定する。創設当初からの理念撤廃となれば、地方クラブが首都圏の巨大スタジアムでホーム試合を開催し、都市部に下部組織をつくることもできるようになる。また、クラブ名にネーミングライツを認めることも検討中。開幕から30年を前に、Jは大きな変革期を迎えている。(中略)理事会では賛否両論の激しい議論が行われてきたが、早ければ今月にも地域密着の基本理念撤廃が決まる見通しとなった。従来のホームタウン制度が撤廃されれば、各クラブは全国どこでも下部組織をつくり、有望選手を確保できるようになる。また、全国各地でより自由に主催試合を開催することができるため、例えばイニエスタ擁する神戸の主催試合が、全国の巨大スタジアムでより多く観戦できる可能性も出てくる。収容人員を考えれば、興行規模は飛躍的に高まる」

 Jリーグは、1993年に発足以来、「ホームタウン制」を最大の売り物に発展してきた。地域に根差し、地元ファンの圧倒的支持を受け、自治体との強い協力関係を土台に全国に根を張って来た。しかも、チーム名に企業名を冠さない。必ず都市名を名乗ることが約束にされた。そうした方向性は、当時のプロ野球の実態と対照的で、好感を持って迎えられた。その結果、プロ野球さえも影響を受け、北海道、東北、埼玉、千葉、福岡と、パ・リーグは5球団が都市名を名前につけ、セ・リーグでも東京、横浜、広島の3チームが都市名をつけるまでになった。また、関東、関西の大都市圏に集中していた本拠地も、東北楽天の誕生、日本ハムの移転でずいぶん全国的に広がりを見せた。

 その後に発足したバスケットボールや卓球のプロリーグでも、ホームタウン制は当然のように組織の根幹を成す基本設計であり、疑いをはさむ指摘もほとんどなかった。だからいっそう、ホームタウン制の本家とも言えるJリーグがこれを撤廃するとの報道は衝撃的だった。ともすれば、今後の日本スポーツ界が混乱し迷走する不安さえ感じさせられた。

関係者は即座に否定

 しかし、その日のうちにすぐ、Jリーグ・村井満チェアマンが報道を否定する次のコメントを発表した。

「一部報道機関において、Jリーグがホームタウン制度を撤廃するとの表現を用いた報道がありました。JリーグではJクラブの本拠地を『ホームタウン』と呼び、Jクラブはホームタウンと定めた地域で、その地域社会と一体となったクラブづくりを行いながらサッカーの普及、振興に努めなければならないと定めています。このホームタウン制度について撤廃・変更の事実は一切なく、今後、Jクラブの営業、プロモーション、イベント等のマーケティング活動における活動エリアに関する考え方の方向性について議論しているものです。Jリーグが創設当初から掲げている地域密着の思想が揺らぐものでは全くありません。
公益社団法人 日本プロサッカーリーグ チェアマン 村井 満」

 また、これに呼応して、J1鹿島アントラーズの小泉文明代表取締役社長もツイッターで次のように発信した。

「この記事内容には大きな方針転換だとミスリードされる可能性がある記載があるので少し補足します。Jリーグもクラブも今までのホームタウンを中心とする考え方を変更することはなく、100年構想にあるようにこれからもホームタウンとともに歩んでいく方針です。
 一方で今のレギュレーションではホータウン外でのマーケティング活動が制限されており、例えばスポンサー企業が域外にある場合(J1では大型のスポンサー企業は東京など都市圏)一緒にイベントをすることも出来ないですし、パブリックビューイングなど、かなりの活動が制限されます」(原文ママ)

 村井チェアマンと小泉社長のコメントから、「ホームタウン制度撤廃」は行き過ぎた報道であるが、制度の見直しは検討している姿勢がうかがえる。

 なぜこうした動きになっているのか? まだあまり報じられていない背景を伝えたい。

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