コロナ経口薬 「メルク」など海外3社は「塩野義製薬」よりもなぜ開発が進んでいるのか

国内 社会

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インフルエンザ同様に

 10月17日、北海道で全国初の雪が降り、各地で11月並みの寒さを記録した。

 冬に向けて懸念されるのは新型コロナウイルス感染者が再び増加することだ。

 ワクチンの普及や軽症患者向けの点滴療法が始まったことで重症化を予防することができるようになったが、インフルエンザのように感染したら手軽に服用できる経口治療薬(飲み薬)はまだ存在しない。

 岸田文雄総理は10日、塩野義製薬が飲み薬の臨床試験(治験)を行っている横浜市内の宿泊療養施設を視察した。視察後、記者団に対して「飲み薬は新型コロナウイルス対策の大きな決め手だ」として早期実用化に期待を寄せた。

「最後の1ピース」

 塩野義製薬の手代木功社長は9月29日、現在治験を行っているコロナの飲み薬について、こう語った。

「経済的で簡便にお飲みいただける経口薬は最後の1ピースだ」

 同社は年内に国内で承認申請を行う予定だ。12月から量産を始め、来年3月末までに国内で最低でも100万人分を用意できるとしている。また、世界規模の治験も計画しており、今年末までに米食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)と協議を開始するという。

 この飲み薬は、増殖する際に必要となる酵素(プロテアーゼ)を狙い撃ちすることでウイルスを撃退する。国内での初期の治験が終了した際には、安全性で大きな問題は見られなかった。9月27日から最終の治験(2100人規模)が開始され、症状改善や発症率低下などのデータを収集するが、この結果が良ければ、無症状や軽症の患者を在宅で治療できるようになる。

 塩野義は今年3月期の連結売上高が2971億円と、国内中堅規模の製薬会社だ。だが、インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」やHIV(エイズウイウル)治療薬「テビケイ」を開発した実績を持っている。その経験を武器に塩野義は「最短でも5年はかかる」とされる飲み薬の化合物を約9カ月で特定するという快挙を成し遂げた。化学合成で製造できる飲み薬はワクチン製造とは異なり、既存の医薬品工場を転用することができ、早期の量産化が可能だといわれている。

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